実績PERとは?個人投資家が知るべき基礎知識と活用法

2025.01.23

実績PERとは?個人投資家が知るべき基礎知識と活用法

投資基礎知識

企業の過去の収益実績を表している実績PERは、安定的な収益を求める投資家にとって有用な指標です。
当記事では、PERの基本や実績PERの計算方法、活用の際のメリットとリスクについて、個人投資家向けに詳しく解説します。

実績PERとは?基礎知識と投資における役割

実績PERは、企業の収益力や株価の割安・割高を判断する際に個人投資家が注目する指標の一つです。

PERは株価収益率と呼ばれますが、実績PERは過去の実績値をもとに計算されるため、企業の過去の収益性を反映した株価評価が可能です。

ここでは、まずPERや実績PERの基本的な概念と、他の指標との違いについて詳しく解説し、さらに実績PERの計算方法や特徴についてもご紹介します。

PERとは

株価と企業利益を比べることにより、その企業の株価が割高か割安かを判断する指標です。

具体的には、株価を一株当たりの利益(EPS)で割ることで算出され、PERの数値が低ければ割安、高ければ割高と見なされる傾向があります。

予想PERの違い

過去の実績に基づく「実績PER」と、将来の収益予測に基づく「予想PER」の2種類があります。

実績PERは、企業が過去に実際に得た利益をもとに算出されるため、過去の収益実績に対する現在の株価の評価が反映されています。

一方で、予想PERは今後の利益見込みをもとに計算されるため、将来の収益性に期待がかかっている企業を評価する際に使用されます。

実績PERは、過去のデータに基づいているため、確実性が高いのが特徴です。

しかし、急成長する企業や新しいビジネスを展開する企業の場合、実績PERだけでは将来の成長性を十分に評価しきれない点に注意が必要です。

実績PERのメリットと投資判断への影響

実績PERは、すでに確定している過去の実績をもとにしているため、予測に基づく指標よりも信頼性が高いと言えます。

このため、安定的に収益を上げている企業や成熟企業の評価において、実績PERは特に役立ちます。

例えば、景気の影響を受けにくいインフラ企業や生活必需品メーカーなどでは、実績PERを用いることで株価が現在の利益水準と見合っているかどうかを確認することが可能です。

一方で、成長が期待される企業には、予想PERのほうが適している場合もあります。

そのため、実績PERはあくまで過去の収益性に対する評価であることを念頭に置き、投資判断を行う際には複数の指標と併用することが望ましいです。

実績PERの計算方法とその特徴

実績PERは、企業の株価を一株当たりの利益(EPS)で割ることで計算されます。

EPSは企業が一年間で稼いだ純利益を発行済株式数で割ったもので、企業の収益力を示す指標です。

ここでは、実績PERの具体的な計算方法と特徴について詳しく解説します。

実績PERの計算式と例

実績PERの計算式は次のようになります。

実績PER =株価÷実績EPS

例えば、株価が1000円で、企業の実績EPSが100円の場合、実績PERは次のように計算されます。

実績PER=1000÷100=10

この場合、PERが10ということは、投資家は現在の株価で10年分の利益を期待していることを意味します。

一般的にPERが10前後であれば、割安とされることが多いですが、これは業界や市場の状況によっても変動します。

したがって、PERの適正水準を見極めるには、同業他社との比較や市場の動向も考慮する必要があります。

各業界で違う目安

目安が業界によって異なる点も投資判断をする上で重要です。

成長が期待されるITやバイオテクノロジー業界では、高めに出ることが多いです。

一方で、成熟したインフラ業界や生活必需品メーカーなどでは、比較的低い基準となります。

そのため、利用する場合は、業界全体の平均PERや他の主要企業の実績PERと比較することで、その企業の株価が割安なのか、あるいは割高なのかを判断できます。

実績PERの特徴と注意点

実績PERは、過去のデータに基づいているため信頼性が高いものの、将来の業績を評価するには限界があります。

特に、景気変動や業界の急成長、競合の台頭などで企業の収益構造が大きく変わる場合、過去の実績が今後も維持されるとは限りません。

そのため、予想PERや他の財務指標も併用して企業の成長性を多角的に評価することが重要です。

以上のように、実績PERは企業の過去の収益実績をもとにした指標であり、安定した収益を上げる企業の評価に特に有効です。

しかし、成長性や将来の業績を考慮するためには、他の指標と組み合わせた分析が必要です。

実績PERを活用するメリット

実績PER(株価収益率)は、過去の収益実績に基づいて企業の収益性や株価の評価を行うため、個人投資家が企業の財務状態を理解し、投資判断を下す際に非常に役立つ指標です。

企業の収益力の把握や株価の割安・割高の判断が可能であり、特に成熟企業の分析に適しています。

ここでは、実績PERを活用することで得られる具体的なメリットについて、詳しく解説していきます。

実績PERを使うことで見える企業の収益力

実績PERは、その企業がどれだけの収益力を持っているかを客観的に評価するのに役立ちます。

実績値に基づくことで、特に安定した収益を上げる企業の本質的な力を把握することが可能です。

実績PERで収益力の安定性を確認する

実績PERが低い場合、その企業が収益を安定的に生み出し、投資家が比較的少ない年数で投資回収を見込めることを意味します。

特に、利益の増減が少なく、安定している企業に対しては実績PERが非常に有効です。

例えば、インフラ系や生活必需品業界の企業は、景気に左右されにくいため、収益のブレが小さく、実績PERによって収益力を測るのに適しています。

また、実績PERは新興企業や成長企業に比べ、成熟企業や安定した収益を上げる企業において信頼性が高まります。

過去の実績に基づいた収益力を測定するため、景気の波を乗り越えてきた企業の強さや収益性が反映されやすい点がメリットです。

実績PERを通じた株価の割安・割高判断

実績PERは、株価が現在の収益力と見合っているかを示す指標として活用されます。

実績PERが高ければ割高、低ければ割安とされることが多く、適正な価格で投資可能か見極める基準の一つとなります。

実績PERで割安株を見つける

実績PERが低い企業は、現在の株価がその企業の収益力に対して割安である可能性があります。

例えば、同じ業界の企業と比較して実績PERが低い場合、収益力が高いにもかかわらず市場で過小評価されていることが考えられます。

このような企業は、将来的に市場での再評価による株価上昇が見込める可能性があり、投資対象として魅力的です。

また、株価が割高なのか割安なのか判断する際は、企業の配当や財務状況も参考にすることが重要です。

配当が安定している企業の場合、実績PERが低く、配当利回りが高いことで、個人投資家にとって株価が割安と判断される可能性が高まります。

このように、実績PERを用いた株価の評価は、長期的な投資においても活用できる基準となります。

実績PERが高い場合のリスクも把握する

一方で、実績PERが高い場合は株価が収益に比べて割高と見なされる可能性があり、注意が必要です。

例えば、同業他社と比較して高い実績PERがついている場合、その企業に対する市場の期待が先行しているケースが考えられます。

この場合、収益力が期待ほど高くない場合、株価の下落リスクも増大します。

したがって、実績PERが高い銘柄には、成長期待がどれだけ現実的かを見極める慎重さが必要です。

業界別の実績PER活用法と適正水準

実績PERの目安は、企業の属する業界によっても異なるため、業界ごとの適正水準を理解することが、投資判断において大きな助けとなります。

成長が見込まれる業界と安定した業界では、同じ実績PERでも割安・割高の意味合いが異なる場合があります。

成長業界と成熟業界で異なる実績PERの水準

成長が見込まれる業界の場合、実績PERが高く出る傾向があります。

例えば、ITやバイオテクノロジーなどの分野は将来的な収益拡大が期待されるため、実績PERが高くても投資対象として魅力的に映ることが多いです。

こうした業界では、単に実績PERの数値だけで割安・割高を判断するのではなく、今後の成長性も考慮することが必要です。

一方、インフラや生活必需品などの安定業界では、一般的に実績PERが低めになる傾向にあります。

これは、これらの業界は成長余地が小さい分、収益が安定しているからです。

個人投資家がこれらの業界に投資する場合、実績PERが他の成長業界と比べて低くても、むしろ安定性を重視した投資の判断基準として、実績PERの低さをプラス材料と考えるべきでしょう。

業界別に比較する際のポイント

実績PERを業界ごとに活用する場合、同じ業界内の複数企業を比較することで、より精度の高い判断が可能になります。

例えば、ある企業の実績PERが業界平均を下回っている場合、それは市場で過小評価されている可能性があるため、投資対象として検討の余地があるでしょう。

逆に、業界平均を大幅に上回る実績PERの場合は、市場の期待が大きすぎる可能性があり、慎重に判断することが求められます。

このように、実績PERは単独の数値として評価するだけでなく、業界ごとの適正水準や成長性と合わせて判断することで、より正確な投資判断が可能になります。

実績PERのデメリットと注意点

実績PER(株価収益率)は、企業の過去の収益力を基に株価の割安・割高を判断するため、個人投資家にとって有用な指標です。

しかし、実績PERには注意点も多く、特に企業の将来成長や景気変動の影響には対応しきれない面があります。

ここでは、実績PERのデメリットとその注意点について解説し、リスク管理のためのポイントもご紹介します。

実績PERと将来性評価の難しさ

実績PERは過去の実績に基づくため、将来の成長を見込んだ企業の評価には不向きな点がデメリットとして挙げられます。

特に成長株や新興企業など、今後の利益拡大が期待される銘柄では、実績PERだけでは不十分です。

実績PERと成長株の評価の不一致

実績PERは過去の収益に基づくため、現在利益が少ないものの将来的に成長が期待される企業には適していません。

例えば、ITやバイオテクノロジーといった成長性の高い分野では、現在の利益が小さいものの、今後の市場拡大が期待されています。

このような企業の実績PERが高く出ても、それは単に利益がまだ少ないだけであり、将来の成長ポテンシャルを正確に反映しているとは言えません。

成長企業にはむしろ「予想PER」が適しており、将来の利益を基に評価することで、現在の株価が将来の収益力と見合っているかどうかを把握しやすくなります。

実績PERは過去の業績を反映する点で確実性は高いものの、成長性が期待される企業の評価には限界があるため、成長株投資では慎重な判断が求められます。

実績PERと安定株への適応性

一方で、安定的な収益を上げる成熟企業の評価には実績PERが有効です。

インフラや生活必需品業界のように景気変動の影響が少ない企業では、過去の収益実績が将来も継続する可能性が高いため、実績PERを基にした評価が信頼できます。

成長企業には不向きですが、安定株においては実績PERが適切な評価を下す手段として使えます。

景気変動が実績PERに及ぼす影響

実績PERは過去の業績に依存するため、景気変動による業績変動を反映しきれないリスクもあります。

特に景気の好不況によって企業の収益が大きく変動する場合、実績PERの信頼性が低下する可能性があるため、景気に敏感な企業では注意が必要です。

景気後退期の実績PERの限界

景気後退期には、多くの企業で業績が悪化するため、実績PERが高めに出る傾向があります。

例えば、リーマンショックやコロナショックのような経済的な危機では、多くの企業が業績を悪化させ、その結果として実績PERが急上昇します。

このような状況では、企業の成長性や将来の利益力が正しく反映されていないため、実績PERに頼った判断はリスクが伴います。

景気回復期には業績が改善し、実績PERが低下する可能性があるため、単純に数値だけで判断するのではなく、景気動向を踏まえた判断が必要です。

特に景気に左右されやすい製造業や輸送業などでは、実績PERが業績変動をそのまま反映するため、過度に景気動向に影響を受けない判断基準も併せて考慮することが重要です。

好景気による実績PERの誤解

逆に好景気の際は、企業の収益が一時的に増加し、実績PERが低く出ることがあります。

このような場合、企業の収益性が過大評価されることがあるため、注意が必要です。

例えば、業績が好調なときの実績PERが低い企業は一見割安に見えますが、景気後退期に業績が低下すると株価も急落するリスクがあります。

好景気に影響を受けやすい企業では、過去の収益力だけでなく、長期的な収益構造も検討することが求められます。

実績PERを使う際のリスク管理のポイント

実績PERを使った投資判断には、将来の成長性や景気変動の影響など、リスクを把握する視点が欠かせません。

実績PERを用いる際に、どのようなリスク管理が有効かを理解しておくことで、より確度の高い投資判断が可能になります。

業界特性を考慮したリスク管理

実績PERを評価する際は、企業の属する業界の特性を考慮することが重要です。

安定した業績を持つインフラ業界や消費財業界では、景気の影響を受けにくいため、実績PERが比較的信頼性を保つ一方、景気に敏感な製造業や輸送業ではリスク管理が不可欠です。

業界ごとに異なる実績PERの適正値を把握し、安定業界では長期投資の判断基準として、景気変動の影響が大きい業界では予測指標との併用でリスクを軽減する工夫が必要です。

複数の指標を組み合わせた分析

実績PERは単独での使用よりも、他の指標と組み合わせてリスク管理を強化することが効果的です。

例えば、PBR(株価純資産倍率)やROE(自己資本利益率)など、企業の財務体質や収益性を多角的に評価する指標と組み合わせることで、実績PERの限界を補完できます。

また、配当利回りと組み合わせることで、収益性に対して株価が過大評価されていないかを確認することも有効です。

長期的な視点での評価

実績PERは短期的な判断よりも、長期的な視点で評価することでリスク管理が向上します。

特に、安定的な収益が期待できる企業に対しては、実績PERの変動に惑わされず、長期的に保有することでメリットを享受しやすくなります。

短期的な景気変動に左右されにくい銘柄であれば、過去の実績と業界の安定性を重視し、安定した投資リターンを得るための戦略を立てることが可能です。

まとめ

実績PERとは、企業の過去の収益力に基づいて現在の株価が適正かを判断する重要な指標です。

個人投資家にとって、特に収益の安定した成熟企業に対する投資判断には欠かせない基礎知識です。

実績PERを活用することで、株価の割安・割高の評価が可能になり、適切な投資タイミングの見極めに役立ちます。

しかし、将来の成長性には対応しきれないこともあり、予想PERや他の指標との併用も考慮するとより効果的な分析が可能です。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

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