退職金の控除と計算方法を徹底解説|税金を賢く抑えるポイントとは?

退職金の控除と計算方法を徹底解説|税金を賢く抑えるポイントとは?

退職金運用

退職金にかかる税金は「退職所得」として特別な計算がされ、退職所得控除や1/2課税の優遇で手取りが大きく変わります。本記事では、所得税・住民税の違いや課税対象額の算出方法、iDeCoとの併用時の注意点などについてわかりやすく解説します。節税の鍵となる控除額の計算方法や、短期退職・複数受給時の注意点もカバーし、退職金を最大限活かすための知識を提供します。

退職金にかかる税金とは?

退職金を受け取る際は、一般的な給与とは異なる特別な課税ルールが適用されます。これは「退職所得」として扱われ、税制上の優遇措置が設けられているのが特徴です。具体的には、一定額までの控除が認められており、残りの金額に対しても課税対象を半分に軽減した上で計算されます。この制度により、勤続年数が長いほど税金の負担が抑えられる仕組みです。

適切な知識を持っていれば、手取り額を大きく確保できる可能性もあるため、事前に仕組みを理解しておくことが重要です。この記事では、退職金の税金についても詳しく紹介します。

退職金は「退職所得」として課税される

退職金にかかる税金は、一般の所得と区別された「退職所得」として税務上処理されます。この制度は、長年にわたる労働への対価を一括で受け取る性質に配慮したもので、通常の給与所得よりも税率が抑えられるように設計されています。

具体的には「退職所得控除」を差し引いた上で、さらにその半分だけが課税対象となるため、税金の計算方法が大きく異なります。この仕組みを知っておくことで、正確な手取り額の見積もりや節税のヒントにもつながります。

所得税と住民税の違い

退職金にかかる税金には、「所得税」と「住民税」の二種類があります。

所得税

  • 国に納める税金で、退職金受け取り時に源泉徴収されるのが一般的。
  • 退職所得控除や1/2課税の仕組みを経て計算される。

住民税

  • 翌年度の住民税に反映されるため、タイムラグがあるのが特徴。
  • 定率課税が用いられるため、税額の出し方が異なる。

両者の違いを理解することは、手取り額の正確な把握と資金計画に欠かせません。

税負担が軽くなる理由と仕組み

退職金の税負担が軽減される最大の要因は、退職所得控除と1/2課税のダブル優遇制度です。

まず、「退職所得控除」によって、勤続年数に応じた一定額までは非課税となります。次に、課税対象となる金額もその半分だけが課税ベースとなるため、通常の給与よりも大幅に税負担が軽くなります。これにより、同じ金額でも通常の所得とは比べものにならないほど有利な課税結果となり、老後資金の確保に大きく貢献します。

制度の仕組みを理解しておくことで、損を避けることができます。

退職所得控除の基本と計算方法

退職所得控除とは、退職金に対する課税を軽減するための特別な控除制度です。この控除額は、勤続年数に応じて自動的に計算され、一定の基準額までは非課税になります。控除が適用された後の金額のみが「課税退職所得」となり、さらにその半額が実際の課税対象になるという優遇措置もあります。

退職金を受け取る際の納税額を大きく左右するため、控除の計算ルールと適用条件を正確に把握することが、老後資金の最大化に直結します。

退職所得控除額の計算式

退職所得控除額の計算は、勤続年数に応じて変動するルールが定められています。

基本式は「40万円 × 勤続年数」ですが、20年を超えると優遇され、「70万円 ×(勤続年数-20年)+800万円」となります。この計算式により、長期間働いた人ほど多くの控除が受けられる仕組みです。

なお、最低でも「80万円」が保障されており、短期勤続でも一定の保護があります。この制度を正しく理解していれば、不要な税負担を回避することができます。

20年以下・20年超の計算ルール

退職所得控除には、勤続年数が「20年以下」と「20年超」の場合で異なる計算方式が設定されています。

20年以下では年数×40万円で控除額が決まり、20年を超えると、まず800万円をベースに、21年目以降の年数に70万円を掛けて加算するというステップに切り替わります。

この2段階方式により、長く勤めた人ほど恩恵が大きくなる仕組みです。特に定年退職者にとっては非常に有利な制度で、受け取り前に勤続期間を正確に確認することが重要です。

控除額の早見表

退職所得控除額をスムーズに把握するには、勤続年数別の早見表が便利です。

例えば、10年なら400万円、15年なら600万円、20年で800万円の控除が適用されます。さらに、25年なら「800万円+(5年×70万円)=1,150万円」となります。このように、年数ごとの金額を一覧で確認することで、自身のケースにおける非課税枠を即座に見積もることが可能です。

早見表を活用すれば、納税額の事前予測や資金計画もスムーズに行えます。

退職金にかかる税額の計算ステップ

退職金の手取り額を正確に把握するには、税額の計算手順を段階的に理解することが不可欠です。

大まかには「課税退職所得金額の算出」→「所得税・住民税の計算」→「手取り額の確定」という3ステップで構成されます。これらのプロセスを理解することで、思わぬ税負担を回避でき、資金計画も立てやすくなります。特に大きな退職金を受け取る場合は、節税のチャンスにもつながるため、早めのシミュレーションが鍵となります。

① 課税退職所得金額の計算方法

まずは、課税対象となる退職所得金額を算出するところから始めます。

計算式は「(退職金の支給額 - 退職所得控除額)÷ 2」です。

このように、まずは控除で大幅に課税対象が減額され、さらにその金額を半分にするという流れになっており、非常に優遇された計算方法といえます。この制度を活かせば、1,000万円の退職金でも、課税対象は数百万円に抑えられる可能性があります。控除額の正確な把握が、節税の第一歩です。

② 所得税・住民税の算出方法

課税退職所得が確定したら、それに対して所得税と住民税をそれぞれ計算します。

所得税

「累進課税方式」が採用されており、金額に応じて5~45%の税率が段階的に適用されます。

住民税

全国一律で10%が課されるのが基本です。ただし、退職金は「分離課税」扱いとなるため、ほかの所得とは切り離して個別に課税される点が特徴です。

これにより、ほかの収入と合算して課税されるよりも、税負担が軽くなるケースが一般的です。

③ 実際のシミュレーション例

例えば、退職金として1,200万円を受け取る場合、勤続20年なら退職所得控除は800万円です。このケースでは、課税対象額は「(1,200万円-800万円)÷2=200万円」となり、この200万円に対して所得税と住民税が課されます。

所得税は約5~10%(※控除後の金額によって異なる)、住民税は一律10%とすると、合計で約30万円程度が税金として差し引かれる見込みです。こうした試算を事前に行うことで、受け取り時の資金計画に役立ちます。

退職金の受け取り方による税額の違い

退職金の受け取り方法には「一時金」「年金形式」「併用型」の3パターンがあり、それぞれ課税の仕組みが異なります。受け取り方を変えるだけで、手取り額や納税額が大きく変動するため、老後資金を効率よく残すには受け取り方の選択が重要です。一時金はまとまった資金が得られ、年金形式は安定収入として機能し、併用型は両方の特性を組み合わせた柔軟な設計が可能です。

ここでは、それぞれの課税ルールと特徴を解説します。しっかり理解しておくことで、自分に合った最適な受け取り方を選ぶことができます。

一時金受け取りと税制上のメリット

退職金を一括で受け取る「一時金方式」では、税務上の大きな優遇が受けられます。

まず、勤続年数に応じた「退職所得控除」が適用され、その後に残る金額の半分だけが課税対象になります。この「1/2課税」によって実際の税負担は大幅に抑えられ、多くのケースで手取り額が最大化されます。

短期間で資金を必要とする人や、住宅ローンの返済やまとまった投資を考える人にとって、一時金受け取りは大きなメリットをもたらす方法です。

年金形式で受け取る場合の課税方法

年金形式で退職金を受け取る場合は、毎年の収入として「雑所得」に区分されます。そのため、他の収入と合算されて所得税が課される「総合課税」の対象になります。この方式では、退職所得控除のような特別な優遇は適用されず、年ごとに課税され続ける点が特徴です。

年金受取は長期的に安定した現金収入を得たい人には向いていますが、年収が高くなると税率が上がることもあるため、所得のバランスを意識した設計が必要です。

一時金+年金併用時の注意点

退職金を「一時金と年金のミックス型」で受け取る方法もあり、資金の即時確保と将来の安定収入を両立できる柔軟な選択肢です。

ただし、税務上は一時金と年金がそれぞれ異なる課税ルールで処理されるため、控除の適用タイミングや金額配分に注意が必要です。特に、退職所得控除の適用を受ける一時金と、雑所得として課税される年金のバランスが重要になります。両者を組み合わせる際は、税額の試算と将来の収支見通しを事前に行うことが賢明です。

短期退職・複数回受け取り時の注意点

退職金の受け取りにはさまざまなパターンがありますが、短期間での退職や複数回の受給となるケースでは、通常とは異なる課税ルールが適用されるため、特別な配慮が求められます。

例えば、短期退職では税制上の優遇措置が限定されることがあり、控除の恩恵を十分に受けられないケースもあります。また、退職金を複数回に分けて受け取る場合には、それぞれの支給時に課税処理が個別に行われるため、手取り額に差が出る可能性も。

こうした例外的な取り扱いを理解しておくことで、将来的な資金計画の精度が高まります。

「短期退職手当等」の扱いと課税

令和4年の税制改正により、勤続5年以下の短期退職者が高額な退職金を受け取る場合は「短期退職手当等」として扱われ、従来の1/2課税の優遇が適用されなくなりました。これにより、退職所得控除後の残額がすべて課税対象となり、納税額が大きくなる可能性があります。特に役職付きの短期退職者や中途入社から短期間で高額退職金を得る人は要注意です。

事前に制度の変更点を把握し、税額の試算をしておくことが損を防ぐカギとなります。

5年ルールと19年ルールの違い

退職金に関する「5年ルール」と「19年ルール」は、受け取り時の税金を大きく左右する規定です。

「5年ルール」は、退職後5年以内に再度退職金を受け取った場合、退職所得控除が通算されず、別計算になる可能性がある点が特徴です。

「19年ルール」は、同一企業に再雇用された場合、前回の勤続年数と通算するかどうかの基準となるものです。

どちらも控除額の算出に大きな影響を及ぼすため、再就職や早期退職を検討する際には慎重な判断が求められます。

複数回受給時の控除の取り扱い

退職金を2回以上に分けて受け取る場合、それぞれの控除適用に関するルールに注意が必要です。

原則として、退職所得控除は「1つの退職につき一度だけ」適用されるため、複数回受給すると控除額が減少するか、まったく適用されないこともあります。特に退職から5年以内の再受給では、税務上の取扱いが厳格化されており、予期せぬ課税強化につながることも。

将来的に退職金を分割で受け取る可能性がある場合は、税理士など専門家への相談が有効です。

退職金控除を最大限活用するためのコツ

退職金の受け取りにおいて「退職所得控除」は非常に強力な節税ツールですが、その効果を最大化するには戦略的な準備が欠かせません。ポイントは、受け取りの時期や金額の分散、他の退職金制度との組み合わせを踏まえた計画です。

特に近年注目されているiDeCo(個人型確定拠出年金)との併用では、受給時期を調整することで課税対象額を圧縮できます。制度の仕組みを理解したうえで、自分に最適な活用法を見つけることが、老後資金を守るカギになります。

退職金とiDeCoの最適な受け取りタイミング

退職金とiDeCoを同じ年に受け取ってしまうと、税制上の優遇措置が重複せず、控除枠が圧迫されるリスクがあります。そのため、退職金とiDeCoの受給年をずらす「分離受給」が賢明です。

例えば、退職金を受け取った翌年以降にiDeCoを年金形式で引き出すことで、それぞれの所得区分が明確になり、税金を最小限に抑えることが可能です。iDeCoの受け取り開始時期は自身で設定できるため、ライフプランと税負担を見据えた設計が重要です。

確定申告が必要なケースと提出方法

退職金は、原則として会社側が「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば源泉徴収で完結しますが、これを未提出の場合や、iDeCoとの重複受給がある場合などは確定申告が必要です。

特に税額を過剰に引かれてしまった場合には、申告によって還付が受けられる可能性もあります。申告は原則として翌年の2月~3月に行い、国税庁のサイトからe-Taxで手続きするのが一般的です。適切な書類の準備と期限管理が、申告成功のポイントです。

税金を抑える退職時期の選び方

退職時期を意識するだけで、税負担に大きな差が出ることがあります。たとえば、1月と12月でたった1日しか違わなくても、退職金の受取年が変われば控除の適用年度がずれ、他の所得との合算リスクを回避できます。

また、iDeCoや企業年金の受給が重ならないようにスケジューリングすることで、控除を無駄なく使い切ることが可能です。節税を意識するなら、退職のタイミングは「年の境目」を見極めるのがカギになります。

まとめ

退職金に対する税金は、通常の給与とは異なる優遇措置があり、正しく理解すれば大きな節税が可能です。退職所得控除や1/2課税により、実際の課税額は大幅に抑えられる仕組みです。また、受け取り方法(⼀時⾦・年⾦形式・併⽤型)や受取時期の工夫、iDeCoとの調整によっても手取り額は変動します。

短期退職や複数回の退職金受給など特殊なケースでは、控除適用ルールに注意が必要です。退職前に制度を正しく理解し、計画的に活用することで、将来の資金をしっかり確保できます。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

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