投資基礎知識
投資に興味を持っている、もしくは投資している人の中には
「配当性向って何?概要や計算方法について知りたい」
「配当性向の目安値について知りたい」
「配当性向が示す情報、投資する際に確認することについて知りたい」
このように思われている人も多いのではないでしょうか?
当記事ではこのようなお悩みを解決していきます!
記事を最後まで読んでいただければ、上記のお悩みについて解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
配当性向とは
配当性向は、企業がその利益の一部を株主に配当として支払う割合を示す重要な財務指標です。
この指標は、企業の配当政策や財務戦略、株主との関係性を理解する上で極めて有用になります。
配当性向の計算方法
配当性向を算出する方法には、企業の純利益を基にする方法と、1株あたりの利益を基にする方法の2種類があります。
どちらの方法でも、企業の純利益を基準として算出されるため、得られる結果に差異はありません。
それぞれの算出方法について詳しく解説していきます。
当期純利益で求める方法
この方法では、企業の当期純利益の全体とその期間に支払われた配当金の総額を使用して、配当性向の値を導き出します。
具体的な計算式は以下の通りです。
配当性向(%)=配当額÷当期純利益×100
例えば、当期純利益が6,000万円でその期間に合計で1,800万円の配当金が支払われた場合、配当性向の値は30%になります。
1株の利益で求める方法
この方法では、配当金額を純利益で割る点は共通していますが、1株あたりの純利益と1株あたりの配当金額を用いて値を算出します。
具体的な計算式は以下の通りです。
配当性向(%)=1株の配当額÷1株の当期純利益×100(%)
例えば、1株の純利益が600円で1株の配当金が180円の場合、配当性向の値は30%になります。
配当性向の目安値
配当性向の基準値は約30%前後です。
企業の配当性向は、その企業が得た利益のうち、内部留保、従業員の給与、株主への配当金の三つにどれだけを充てるかを示す目安です。
生命保険業界では、社団法人生命保険協会が発表した「平成29年度生命保険調査」によると、上場企業の株主還元目標は平成23~29年で約30%前後と推移しており、日本国内のTOPIX構成企業も同様に配当性向が約30%で推移しています。
企業は当期の純利益の一部を内部留保に蓄え、事業投資や経営状況の改善資金として使用します。
この配当性向の値が適正であるとされる理由です。
配当性向が100%以上を示す場合、企業はその当期の純利益を超える金額を配当金として支払っていることになります。
これは企業の利益が減少している可能性を示唆しますが、企業は株主の株式売却を防ぎ、株価の安定と長期的な保有を促進し、他社からの買収を防止するために配当を維持する場合があります。
そのため、配当性向が100%になったからといって即座に危険な状態であるとは限りませんが、長期間この状態が続く場合は利益が不安定であることを示すことも少なくありません。
一方、配当性向がマイナスになる場合、企業は当期の純利益がマイナスでありながら配当金を支払っていることになります。
これは企業が内部留保を使って資本を充てていることを意味し、投資先の再評価が必要とされる状況です。
純利益がマイナスのまま続けば、株価の低下や企業の倒産リスクが高まる可能性があります。
高い配当の企業に投資を行うメリット
高い配当の企業に投資を行うメリットは、以下の通りです。
収益が安定する
安定的な収益が期待できる点、インカムゲインはキャピタルゲインに比べて一度に得られる収益は少ないですが、その代わり安定した収益が期待できます。
キャピタルゲインを追求する場合は日々の株価チェックやテクニカル分析が必要ですが、インカムゲインの場合は一度投資すれば定期的に配当が得られ、株価の変動を頻繁に追わなくても済みます。
ただし、完全に放置するのはリスクがあるため注意が必要ですが、キャピタルゲインを目指す投資に比べて精神的に負担が少ない投資が可能です。
収入が定期的に入る
定期的な収入が得られるという点では、日本企業では通常年に2回の配当があり、アメリカ株では年に4回の配当が一般的です。
さらに、一部の企業では年間を通じて配当が支払われることもあります。
一度に得られる利益は少ないですが、定期的な収入が得られることはインカムゲインを目指す投資の大きな利点です。
長期投資に最適
長期投資に向いている点では、インカムゲインは長期間保有すればするほど積み上がる利益です。
投資の基本が長期投資であることを考えると、インカムゲインを狙う投資はその基本原則に合致しています。
配当が安定している企業を対象としたインカムゲイン投資は、自然と長期保有することが多くなります。
配当性向が示す情報
配当性向が示す情報は、以下の通りです。
配当政策の透明性
高い配当性向を持つ企業は、安定した収益性を持ち、株主価値の最大化に積極的に取り組んでいると見なされます。
投資家は企業の配当政策が透明であることを好み、将来の収益の安定性を確認する上でこの指標を重視します。
業界の慣行と比較
配当性向は業界の慣行と比較することで、企業の配当政策が業界全体とどれだけ一致しているかを判断する手助けをします。
成熟した業界では一般に高い配当性向が求められ、安定した配当を期待する株主に対して企業は配当性向を高めることが求められます。
成長とリスク管理
一方で、成長産業や新興企業は収益を再投資して成長を促進するため、低い配当性向を持つことがあります。
これは企業が将来の成長機会に資金を投じ、競争力を維持するための戦略的な判断であり、リスク管理の一環として考えられます。
財務健全性の指標
配当性向は企業の財務健全性を評価する上でも重要です。
過度に高い配当性向は企業が将来の成長に資金を割けていない可能性を示し、逆に低すぎる場合は株主還元の意思が不十分であると考えられることがあります。
投資判断の材料
配当性向は投資家にとって企業の魅力度を評価する重要な指標です。
定期的に配当を得たい投資家は高い配当性向を好む傾向がありますが、企業の長期的な成長戦略とのバランスを考慮することも重要です。
投資で利用する際に確認すること
高い配当性向の企業への投資を考える際には、以下の3つのポイントを確認することが重要です。
企業の収益増加の確認
高い配当性向であっても、企業の純利益が減少している場合や収益が安定していない場合、その株価が下落するリスクが考えられます。
投資先として魅力的であるかどうかを判断するために、企業の収益の増加傾向を確認しましょう。
事業の安定性や成長性も含めて全体像を把握することが重要です。
株主への利益還元の積極性
日本企業はしばしば利益を内部留保に留める傾向があります。
これにより、将来の事業発展やリスクへの備えに資金を割り当てることが可能になります。
投資する企業が株主への利益還元にどれだけ積極的かを見極めるために、過去の配当履歴や現在の配当水準を詳しく調査することが重要です。
必要に応じた株の売却の検討
長期的な資産形成を目指す場合、高額な配当が得られる企業株を保有していても、業績が悪化したり、配当が減少したりした場合には株の売却を考える必要があります。
配当金の減少や企業の業績悪化が見込まれる場合は、保有している株を売却することで損失を回避し、他の投資機会を探ることも有益です。
これらのポイントを把握して、高い配当性向の企業への投資を検討する際には、リスク管理と将来の投資リターンのバランスを考慮することが重要です。
長期的な資産形成の戦略を明確にするために、定期的に企業の財務状況をモニタリングするようにしましょう。
配当性向の注意点
配当性向は投資判断において重要な指標ですが、注意点もあります。
配当性向に関する注意点は、以下の通りです。
業種や企業特性の考慮
配当性向は企業の業種や特性によって大きく異なります。
例えば、成長産業や新興企業は利益を再投資することで市場シェアの拡大や新技術の開発に資金を充てることがあり、そのために配当性向が低い傾向にあることも少なくありません。
逆に、成熟した産業や安定した収益を持つ企業は比較的高い配当性向を示すことが期待されます。
業種や企業の成長段階を考慮して、適切な基準を持って配当性向を評価することが重要です。
短期的な変動の影響
配当性向は一定の収益基準や業績予測を前提として計算されますが、短期的な経済変動や企業内部の特定の事象によって影響を受けることがあります。
例えば、特別な事業投資や財務戦略の変更、外部環境の不確実性が配当性向に影響を与える可能性があります。
投資家は長期的な視点で企業の配当政策を評価することが大切です。
配当政策の持続性
高い配当性向を維持する企業は、将来の収益予測や事業計画を基にした持続可能な配当政策を持っていることが望ましいです。
一時的に高い配当性向を示しても、それが持続可能でない場合は、投資家にとってリスクが高まる可能性があります。
企業の財務健全性や将来の成長戦略を考慮して、配当性向の持続性を見極める必要があります。
株主還元のバランス
配当性向が高い企業は株主還元に積極的である反面、そのために事業投資や財務戦略の柔軟性が制限される場合があります。
投資家は企業の株主還元と将来の成長のバランスを理解し、投資判断に反映させる必要があります。
配当性向のみに依存しない
配当性向は企業の財務健全性や投資価値を評価するための重要な指標ですが、投資判断をする際には他の財務指標や市場環境も総合的に考慮することが重要です。
単一の指標に依存せず、幅広い情報を基にした投資戦略を構築することが推奨されます。
以上の注意点を踏まえて、配当性向を適切に理解し、投資判断に活用することが重要です。
大きな利益を見込めないことが多い
東証マザーズと東京証券取引所1部に上場している企業の配当性向のランキングを見ると、東証1部上場企業の配当性向が高く、一方で東証マザーズ上場企業の配当性向は低い傾向にあります。
この傾向から、配当性向が高い企業は主に成熟した企業であり、大きなキャピタルゲインを期待しにくい場合が多いことが分かります。
一方で、キャピタルゲインを狙える成長企業では、配当性向が低い傾向にあることに留意することが大切です。
元本は保証されていない
インカムゲインを目指す投資は、キャピタルゲインを目指す投資と比較して安定性がありますが、これは元本が保証されるわけではありません。
自然に、購入した株式の株価が大幅に下落する可能性もあります。
インカムゲインを目指した投資では、毎日株価をチェックする必要はありませんが、投資を長期間放置しすぎると大きな株価の下落に気づかないかもしれません。
その結果、損失を被る可能性もあります。
細かく株価を追わなくても良いですが、インカムゲインを目指す場合でも、一定の確認は必要です。
まとめ
配当性向は、企業がその利益の一部を株主に配当として支払う割合を示す重要な財務指標です。
配当性向の基準値は約30%前後です。
高い配当の企業に投資を行うことで、収益が安定したり、収入が定期的に入ったりといったメリットが得られます。
配当性向は投資判断において重要な指標ですが、投資判断をする際には他の財務指標や市場環境も総合的に考慮することが重要です。
投資に興味を持っている、もしくは投資している人は、配当性向の概要や計算方法、メリット、注意点について十分理解しておきましょう。
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