相続税対策としてアパート経営で失敗する落とし穴とは?起こりうる事例も紹介

2025.05.18

相続税対策としてアパート経営で失敗する落とし穴とは?起こりうる事例も紹介

投資基礎知識

相続税の負担を軽減する目的でアパート経営を検討する人は多いですが、節税どころか逆に税負担が増える事例も少なくありません。相続税の仕組みを理解せずに経営を始めてしまうと、後戻りできない状況に陥ることもあり得ます。本記事では、相続税対策で失敗しないための方法や、不動産経営で注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

相続税対策としてのアパート経営の基本

なぜアパート経営が相続税対策として有効とされているのでしょうか。以下では、不動産評価の仕組みや借入金の扱いなど、アパート経営が相続税負担の軽減につながる基本的な仕組みと考慮すべきポイントを解説します。

なぜアパート経営が相続税対策になるのか

アパート経営が相続税対策に有効とされる理由は、不動産が現金と比較して相続税評価額が低く算定される特性があるためです。

現金は相続時にそのままの額で評価されますが、不動産は建物評価や土地評価の仕組みにより、実際の市場価値よりも低く評価されることが一般的です。

この評価の仕組みを活用することで、相続税負担の軽減が期待できます。

さらに、アパート経営のために借入金がある場合、その負債は相続税評価額から差し引かれるため、さらなる節税効果につながります。

相続税の節税で考慮すべきポイント

相続税を節税する上で重要なのは、不動産の評価額の算定方法を正しく理解し、不動産活用を計画的に進めることです。

例えば、小規模宅地等の特例を活用すると、一定の条件を満たす土地評価額が大幅に軽減される可能性があります。また、アパートローンによる負債も、相続税評価額の計算において有利に扱われます。

ただし、節税目的のみで過剰な借入れをすると、その後の経営や相続後の家族関係に悪影響を及ぼす可能性もあるため、注意が必要です。

さらに、賃貸需要や土地の収益性を無視した計画は失敗につながりやすいため、事前の十分な調査が不可欠です。

建物評価と土地評価の仕組み

相続税における不動産の評価は、主に「土地評価」と「建物評価」に分けられます。

土地評価では路線価や固定資産税評価額を元に計算されるため、現実の市場価格よりも低い評価となることが多いです。

一方、建物評価は建築費や固定資産税評価額を基準に算定されるため、同様に、市場価値よりも低くなる傾向があります。

これらの特性から、現金資産を不動産、特にアパートに替えることで、資産全体の相続税評価額を下げることが可能です。

ただし、正確な評価額の算定には専門的な知識が必要です。そのため、不動産の専門家や税理士と密に連携し、正確な数値を把握することが重要です。

相続税対策としてのアパート経営のメリット

ここでは、土地活用による具体的な節税効果や、安定した家賃収入といったアパート経営ならではのメリットをご紹介します。

土地活用による相続税の軽減

アパート経営は、土地を活用することで相続税評価額を減額できる特徴があります。

例えば、更地として所有している土地の相続税評価額は高く、現金資産と同様に課税対象となります。

しかし、アパートを建設することで「貸家建付地」として評価が軽減され、課税対象額が大幅に減少します。

さらに、アパートそのものも「貸家」として評価されるため、建物が減価償却により評価額が下がり、結果として相続税対策になるのです。

特に、固定資産税の課税標準額がアパート建設により6分の1(「住宅用地の特例」による固定資産税の軽減措置(小規模住宅用地200㎡まで))になるケースも多く、不動産を活用した節税効果を高めることができます。

ただし、これを成功させるためには、計画段階で適切な土地活用の方法を考える必要があり、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

賃貸住宅による収益

相続税対策としてのアパート経営には、家賃収入を得られるという収益性のメリットもあります。

アパートを建設して賃貸経営を行うことで、毎月の家賃収入が安定したキャッシュフローを生み出します。

この家賃収入によってローンの返済を行いながらも、場合によっては手元に収益を残すことが可能です。

また、賃貸住宅を供給することにより、相続後も持続的な収益を得られる点は、不動産を単純に保有するだけの場合とは異なります。

ただし、空室リスクや借入金返済負担なども考慮する必要があるため、経営計画を慎重に立てることが求められます。そのため、立地や賃貸需要をしっかりと調査したりと準備が必要です。

アパート経営で陥りやすい失敗例

ここでは、賃貸経営で特に起こりやすい具体的な失敗事例とその原因について詳しく見ていきます。

空室リスクによる経営の悪化

アパート経営において、空室リスクは避けて通れない大きな問題です。

賃貸物件は空室が続くと収入が減少し、結果的にローンの返済や維持費の負担が重くなります。

特に相続税対策としてアパート経営を始める場合、節税効果を期待しても空室が多ければ、実際の経営状況が赤字となり、結果的に失敗につながりかねません。

また、賃貸需要を見誤ったり、競争の激しい地域で運営してしまった場合は、こうしたリスクがさらに増大します。

賃貸需要を無視した立地選定の失敗

アパート経営で最も重要な要素の一つは、立地の選定です。

地域の賃貸需要を十分に調査せずにアパートを建てると、希望する入居者が集まらず、空室が続くリスクが高まります。

特に地方や過疎地域では人口が減少しており、若年層の流出も顕著なため、賃貸需要がない状態でアパートを建設すると失敗する可能性が高まります。

立地選定においては、周囲の生活環境、交通アクセス、学校や商業施設の有無などを細かく吟味する必要があります。

相続税の計算ミス

相続税対策のためにアパート経営を始める場合、相続税の計算を誤ると予想外の負担が発生することがあります。

不動産に関しては、土地や建物の評価額、特例の適用可否などを正確に把握しなければなりません。

特に「小規模宅地等の特例」などの減額制度の活用を考慮しないまま計画を進めたり、必要な書類を準備しないことで節税効果を最大限に活かせない場合があります。

このような計算ミスは、相続額が増大したり、手元現金が不足する要因となり、アパート経営が経済的に厳しい状況を招くことがあります。

家族間でのトラブルや遺産分割の問題

アパート経営の失敗には家族間でのトラブルや遺産分割の問題も大きく影響します。

アパートは現金や株式と異なり、物理的に分割が難しいため、相続人が複数いる場合、誰が継承するかで揉めるケースが頻繁に発生します。

また、賃貸経営を行う際の責任分担や経営方針について意見が割れるケースも多々あります。事前に家族間で十分に話し合いを行い、遺産分割方法と経営方針を明確にしておくことが必要です。

これを怠ると、アパートの経営だけでなく、家族関係にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

相続税対策の落とし穴

アパート経営を相続税対策として行う上で、「落とし穴」が存在します。

相続後の借入金の返済

アパート経営は相続税対策として有効な手段の一つですが、借入金の返済リスクを無視することはできません。

相続税を減らすためにアパートローンを利用して建築を行った場合、相続開始後にはその借入金が相続人に引き継がれることになります。

家賃収入によって返済が賄えると思っていても、空室が発生すれば計画が崩れる危険性があります。

さらに、相続人全体の財務状況や収支計画を精査しておかなければ、借入金が重荷となり経営が悪化する可能性が高くなります。

そのため、借入金を活用する際には具体的な返済計画を立てる必要があります。

アパート経営を始めた後の認知症

アパート経営を始めた後に被相続人が認知症を発症すると、財産管理能力が低下し、経営が行き詰まるリスクがあります。

認知症になると新たな契約やローンの見直しが難しくなるほか、相続手続きにも支障をきたします。

その結果、適切な経営判断が行えなくなり、収益性が低下したアパートが相続人に渡ることになります。

このような事態を防ぐため、アパート経営を始める際は、家族や専門家とともに事前に任意後見制度の活用を検討することが重要です。

この制度を活用すれば、将来的に認知機能が低下してもスムーズにアパート経営を続けることができます。

不動産価値の下落

アパート経営では、不動産価値の下落も大きなリスクの一つです。

土地や建物の市場価値が下がれば相続税対策で得られる節税効果も減少し、不良資産を相続人が引き継ぐ結果になる可能性があります。

特に、需要のないエリアに建てられたアパートでは売却も難しく、結果的に経営を継続する以外の選択肢が無くなる場合があります。

また、古くなったアパートは修繕費用の増加や空室率の上昇などで収益性がさらに低下するリスクがあるため、建築前に市場動向やエリア需要について十分に調査することが必要です。

不動産価値の下落を防ぐため、立地選定や建物の種類、長期的な維持管理計画が重要です。

アパート経営で失敗を防ぐためのポイント

ここでは、アパート経営で失敗を防ぐためのポイントをご紹介します。

賃貸需要調査と適切な立地選び

アパート経営を成功させるためには、まず賃貸需要の調査が必要です。

地域ごとに賃貸需要の高いエリアと低いエリアがあり、需要の低い場所にアパートを建ててしまうと、空室が増え、結果として収益悪化を招きます。

失敗を防ぐためには、不動産市場の動向や周辺環境の分析を徹底し、適切な立地を選ぶことが重要です。

例えば、駅から近い場所や大学や病院などの施設がある地域は、賃貸需要が高いケースが多いためアパート経営に向いています。

また、建築を請け負うハウスメーカーや不動産会社だけのアドバイスに頼らず、第三者の専門家に調査を依頼することも有効です。

家族間での事前の相続計画

相続税対策としてアパート経営を始めたものの、相続が発生した段階で家族間のトラブルが起きるケースは少なくありません。

特に、複数の相続人がいる場合や遺産額が大きい場合には、事前の計画が必要不可欠です。

事前に家族と話し合い、アパートやその他の遺産の分割方法、税金負担のあり方について合意を形成しておくことが大切です。また、相続税の計算や遺産分割の具体的な方法に関しては、法律や税金の専門家からアドバイスをもらい、家族全員が納得した形で準備を進めましょう。

このような事前準備により、相続発生後の争いを防ぐだけでなく、結果的に相続税や不動産活用の失敗リスクを軽減できます。

専門家への相談

アパート経営を相続税対策として成功させるためには、専門家のサポートを活用することが欠かせません。

税理士や弁護士、不動産コンサルタントなど、相続や不動産に関する知識を持った専門家に相談することで、多角的な視点から計画を立てることができます。

特に、相続税の計算は複雑で、特例の適用ミスなどが致命的な失敗につながることもあります。

さらに、不動産価値の見積もりや賃貸経営プランの策定においても、専門家の意見は非常に重要です。

アパート経営における初期計画を入念に行い、必要に応じて節税対策の見直しも行うことで、相続税対策の効果を最大限に引き出すことができます。

相続税対策に不安がある場合には、複数の専門家に意見を聞き、自分に合った方針を見つけましょう。

相続税額を軽減する方法

ここでは、広く知られている代表的な相続税対策の方法をいくつかご紹介します。

生前贈与の活用

生前贈与を活用することで、相続発生時に相続税額を軽減することが可能です。

生前贈与とは、生きている間に財産を子や孫に贈与することを指します。

贈与税の非課税枠をうまく利用することで、大きな節税効果を得ることができます。

毎年の贈与税基礎控除額である110万円以内で財産を贈与すれば、税負担なく資産を移転することができます。(2024年1月1日以降の贈与については、相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算されるよう税制が改正されました。)

ただし、贈与が適切に行われていないと税務上の問題が発生し、不要なトラブルにつながる可能性があるため、計画的な運用が必要です。

非課税枠の活用

非課税枠を活用するのも効果的な相続税対策の一つです。

例えば、教育資金や結婚・子育て資金としての贈与は、一定額まで非課税となる特例があります。(教育資金贈与の適用期限は2026年3月31日まで)

これを利用することで、相続財産額を減少させ、相続税を軽減することが可能です。

こうした非課税枠をうまく活用するには、贈与の目的や金額、タイミングを慎重に検討することが重要です。

不動産を含む財産を活用した贈与も検討すれば、さらに効果的な相続税対策を実現することができるでしょう。

基礎控除を最大限に活かす

基礎控除を最大限に活かすことは、相続税対策の基本となります。

相続税の基礎控除額は、「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」で計算されます。

例えば、相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円となります。

この控除額を超えないよう、財産を事前に整理することが重要です。生前贈与や非課税枠を適切に利用すれば、基礎控除の範囲内に収めることが容易になります。

また、家族間で事前に話し合いを行い、計画的に財産を分配することで、相続税の負担を軽減し、相続トラブルを回避することも期待できます。

まとめ

アパート経営は相続税対策として有効な手段である一方で、多くの落とし穴が存在します。相続税の評価額を抑えられる点や、賃貸収益を得られる点などは大きなメリットと言えますが、賃貸需要を無視した立地選びや空室リスク、相続税計算ミスなどによる失敗例も少なくありません。また、不動産価値の下落や借入金返済の負担など、経営後のリスクにも注意が必要です。

これらの失敗を防ぐためには、事前の計画や家族間の意思疎通、賃貸需要調査が必要です。また、専門家の協力を得ることで、相続税対策として適切な選択ができる可能性が高くなります。アパート経営を検討する際には、メリットだけでなく失敗リスクを把握し、準備を行うことが重要です。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

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