ファンドのリスクとは?個人投資家が知るべき基本と対策

2025.02.11

ファンドのリスクとは?個人投資家が知るべき基本と対策

投資基礎知識

投資においてリスクは避けるべきものと思われがちですが、実はリスクは「敵」ではなく「味方」にもなり得ます。
リスクをしっかり理解しコントロールすることで、投資のリターンを最大化しつつ、必要以上の損失を防ぐことができます。

当記事では、「ファンドのリスクとは何か」という基本的な問いに答えるとともに、個人投資家がリスクを管理するための実践的なポイントをご紹介します。
リスクの本質を知ることで、より自信を持って投資を行えるようになるはずです。

ファンドのリスクとは

ファンド投資は、多様な資産にアクセスできる利点がある一方で、「リスク」を避けることはできません。

リスクとは、投資の成果が期待通りにならない可能性のことを指しますが、これは必ずしも悪い意味だけではありません。

ここでは、ファンド投資におけるリスクの基本的な定義から、その重要性やメリットについて解説します。

リスクの定義とその重要性

リスクとは、不確実性を伴う可能性のことを指し、投資の世界では特に「資産価格が変動する可能性」を意味します。

この変動は、投資が成功する場合にも失敗する場合にも現れるため、リスクそのものが悪いわけではありません。

リスクの基本的な種類

投資のリスクは主に以下のように分類されます。

・市場リスク

株価や金利などの市場全体の動向に影響されるリスク。

・信用リスク

発行者や取引先が財務的に問題を抱える可能性のリスク。

・流動性リスク

必要なタイミングで資産を現金化できないリスク。

これらを理解することは、投資家が賢い判断をするための第一歩です。

ファンドにおけるリスクとリターンの関係

リスクとリターンは投資の中核となる概念で、リスクが高い投資ほどリターンが大きくなる可能性があります。

一方で、その反対も同様に成り立ちます。

このバランスを正しく理解することで、自分に合った投資判断が可能になります。

・リスクとリターンのトレードオフ

リスクを取れば取るほど、成功したときのリターンは高くなりますが、失敗する可能性も高くなります。

この「トレードオフ」を考慮することで、投資の計画を立てやすくなります。

・リスクプロファイルの重要性

投資家にはそれぞれ異なるリスク許容度があります。

例えば、若年層は長期的なリターンを狙えるためリスクを受け入れやすい傾向にありますが、退職間近の人は安定性を重視するためリスクを抑えた投資を選ぶことが一般的です。

リスクを把握することのメリット

リスクを完全に排除することはできませんが、それを把握しておくことで、適切な対策や選択が可能になります。

投資判断の質を向上させる

リスクを理解していれば、過度に高リスクの商品を選んだり、リターンの低い商品に不必要に投資したりするリスクを避けられます。

感情的な判断を抑える

投資では感情に流されることが大きな損失につながる場合があります。

リスクの存在を事前に認識しておけば、冷静に判断しやすくなります。

長期的な計画が可能になる

リスクを把握した上で投資を行えば、短期的な変動に惑わされず、長期的な視点で資産形成を進められます。

ファンドのリスクの種類

ファンド投資をする上で、さまざまなリスクが関与します。

これらのリスクを理解することで、投資判断がより的確になり、損失の可能性を低減できます。

ここでは、ファンドに関連する主なリスクの種類について詳しく解説します。

市場リスクとは?株価や金利の変動の影響

市場リスクは、株価、金利、為替などの市場全体の動向に影響されるリスクを指します。

このリスクは、特定の企業や業界だけでなく、経済全体や政治的要因によっても影響を受けます。

・株式市場における変動リスク

株式ファンドの場合、株価の変動が大きな影響を与えます。

例えば、景気の悪化や地政学的リスクがあると、株価全体が下落する可能性があります。

・金利変動がファンドに及ぼす影響

債券ファンドでは金利の変動が重要な要素です。

金利が上昇すると債券価格が下落するため、これがファンドのパフォーマンスに直接影響します。

信用リスクとは?発行者や取引相手の信用力の影響

信用リスクは、ファンドが投資する債券や取引相手が財務的に問題を抱える可能性に関連するリスクです。

このリスクは、特に債券型ファンドや高リスクの資産に投資するファンドで注目すべき点です。

・発行体の信用力を評価する方法

信用リスクは、企業や政府の信用格付けによって測定されます。

格付けが低い場合、リターンは高い可能性がありますが、デフォルトのリスクも高まります。

・債券デフォルトの影響

発行体が債務不履行(デフォルト)に陥った場合、投資家は元本や利息を受け取れない可能性があります。

これがファンド全体の価値に悪影響を及ぼします。

流動性リスクとは?資産の売却のしやすさに関わる問題

流動性リスクは、ファンドが保有する資産を必要なタイミングで売却できないリスクを指します。

このリスクは、市場規模の小さい資産や特殊な資産に投資するファンドで特に重要です。

・流動性リスクが高い資産の例

未公開株、不動産、コモディティなどの流動性が低い資産は、売却に時間がかかることが多いです。

市場での需要が少ない場合、想定以上に低い価格で売却する必要が出てきます。

・突発的な売却の必要性とその影響

市場環境が悪化した際、投資家が一斉に資産を売却すると、流動性が急激に低下し、ファンド全体の運用に悪影響を及ぼすことがあります。

為替リスクとは?外国資産への投資の注意点

為替リスクは、外国資産に投資するファンドにおいて特に重要なリスクです。

投資対象の通貨と投資家の基準通貨(通常は日本円)との間の為替レートの変動によって影響を受けます。

・為替リスクの仕組み

例えば、米ドル建ての資産が値上がりしても、円高が進むとリターンが削られる場合があります。

一方、円安になるとリターンが増加します。この相場変動がパフォーマンスに直結します。

・ヘッジありファンドとなしファンド

為替リスクを抑えるために、為替ヘッジを行うファンドもありますが、その分コストがかかることがあります。

投資家はヘッジの有無によるメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。

オペレーショナルリスクとは?運用ミスやトラブルの影響

オペレーショナルリスクは、ファンドの運用プロセスにおける人的ミスやシステムトラブルによるリスクを指します。

他のリスクとは異なり、外部環境ではなく、ファンド運用そのものに関係する内部的なリスクです。

・ヒューマンエラーの影響

運用担当者の判断ミスや誤った運用方針の選択によって、ファンドのパフォーマンスが大きく低下する場合があります。

特に複雑な運用戦略を採用するファンドでは、このリスクが増加します。

・システム障害や不正行為のリスク

金融機関のシステム障害や運用会社による不正行為が発生すると、投資家の資産が直接的に影響を受ける可能性があります。

透明性の高い運用会社を選ぶことが重要です。

ファンドのリスクを数値で測る指標

投資判断を行う際には、リスクを数値化することが重要です。

ファンドのリスクを定量的に理解することで、投資判断がより科学的かつ合理的になります。

ここでは、リスクを測る代表的な指標について、それぞれの特徴と役割を解説します。

標準偏差とその役割

標準偏差は、リスクを測定する上で最も基本的な指標の一つです。

この数値は、投資のリターンがどれだけ平均値から変動しているかを示します。

標準偏差が高いほど、リターンの振れ幅が大きく、リスクが高いとみなされます。

標準偏差の具体的な見方

例えば、平均リターンが5%で標準偏差が10%のファンドは、リターンが-5%から15%の範囲で変動する可能性が高いと解釈できます。

これはファンドの安定性や予測可能性を判断する材料となります。

標準偏差のメリットと限界

標準偏差は、リスクの全体像を把握するのに便利ですが、必ずしもすべてのリスクを反映しているわけではありません。

例えば、大きな下落リスク(ダウンサイドリスク)は個別に考慮する必要があります。

シャープレシオで見るリスクとリターンのバランス

シャープレシオは、リスクに対するリターンの効率性を測る指標です。

この数値が高いほど、取ったリスクに対して効率的にリターンを得ていることを示します。

シャープレシオの計算式

シャープレシオは以下の式で計算されます。

シャープレシオ=(ファンドの平均リターン−無リスク利子率)÷標準偏差

無リスク利子率とは、国債などのリスクがほとんどない資産の利回りを指します。

シャープレシオの活用方法

シャープレシオを比較することで、似たようなリスク水準のファンド同士でどちらが効率的な運用をしているかを判断できます。

ただし、他の指標と併用して総合的に判断するのがベストです。

ベータ値とは?市場との連動性の測定

ベータ値は、ファンドが市場全体の動きに対してどれだけ連動しているかを示す指標です。

この値は1を基準に、高ければ市場よりも価格変動が大きく、低ければ市場よりも安定していると解釈されます。

ベータ値の計算方法と解釈

ベータ値は、ファンドのリターンと市場全体のリターンの相関性から計算されます。

例えば、ベータ値が1.5のファンドは、市場が10%上昇すると15%上昇する可能性が高いことを意味します。

一方で、市場が10%下落すると15%下落するリスクも伴います。

ベータ値の活用場面

ベータ値は、リスク許容度や投資スタイルに応じてファンドを選ぶ際に役立ちます。

例えば、市場全体の動きに左右されにくいファンドを探している場合、ベータ値が低いファンドを選ぶと良いでしょう。

バリュー・アット・リスク(VaR)の考え方

バリュー・アット・リスク(VaR)は、一定の期間内にどれだけの損失が発生する可能性があるかを示す指標です。

この指標は、投資家にリスクを直感的に伝えるために役立ちます。

VaRの計算例

例えば、VaRが1日1%の確率で10万円とされる場合、そのファンドは1%の確率で1日に10万円以上の損失を被る可能性があると解釈されます。

VaRの限界と注意点

VaRは、リスクを数値化して明確にする点で有用ですが、極端なケース(ブラックスワンイベント)には対応していません。

そのため、他のリスク指標と組み合わせて活用する必要があります。

リスクを理解するための情報収集のポイント

投資を成功させるためには、リスクを正しく理解し、それに基づいた判断を行うことが重要です。

その第一歩として、信頼性の高い情報を収集することが欠かせません。

ここでは、個人投資家がリスクを把握するための情報収集の具体的なポイントを解説します。

ファンドの目論見書とリスクの記載

目論見書は、ファンドがどのように運用されるのかを投資家に説明する公式な資料です。

この中には、リスクに関する重要な情報も詳細に記載されています。

目論見書に記載される主なリスク要素

目論見書では、以下のようなリスク要因が説明されています。

・市場リスク

株式や債券などの価格変動に関するリスク。

・為替リスク

外国資産に投資する場合の為替変動の影響。

・信用リスク

投資対象が債務不履行に陥る可能性。

これらのリスク要因を確認することで、自分がどの程度のリスクを受け入れられるかを考える材料にできます。

目論見書の活用方法

目論見書は非常に詳細な情報を含んでいるため、全てを読み込むのは難しいかもしれません。

特に「リスク要因」の項目を重点的にチェックし、自分が理解できないリスクが含まれていないか確認しましょう。

過去の運用成績データの見方

ファンドの過去の運用成績を確認することで、そのファンドがどの程度のリスクとリターンを持つのかを具体的にイメージできます。

ただし、過去の成績が将来の成果を保証するものではないことも理解しておく必要があります。

運用成績データで注目すべきポイント

運用成績データを確認する際には、以下の点に注目しましょう。

・年次リターン

年ごとのリターンを比較し、変動幅を把握する。

・最大ドローダウン

過去の最大下落率を確認し、リスク許容度に合っているか判断する。

・運用期間

長期間にわたって安定的な運用をしているファンドかどうかを確認する。

運用成績からリスクを読み解く方法

例えば、リターンが高いファンドでも最大ドローダウンが大きい場合は、リスクが高い運用が行われている可能性があります。

一方、安定的にリターンを提供しているファンドは、比較的リスクが抑えられていることが期待できます。

アナリストや専門家の意見を活用する方法

投資の初心者や情報を深く掘り下げたい場合、アナリストや専門家の意見を参考にするのも有効です。

これにより、自分では見つけられなかったリスク要因に気づくことができます。

専門家の意見を活用するメリット

専門家は市場全体のトレンドや特定のファンドの詳細を把握していることが多く、次のような点で役立ちます。

  • ファンドの特徴やリスクの説明。
  • 市場環境がファンドに与える影響の予測。
  • 他のファンドとの比較や適切な選択肢の提示。

信頼できる情報源の選び方

ただし、すべての意見が正しいとは限りません。

信頼できる情報源を選ぶために、運用実績がある専門家や公的な評価機関のレポートを活用しましょう。

また、複数の意見を比較することも重要です。

リスクに関する情報を更新する重要性

投資環境は日々変化しており、過去に得た情報が現在でも有効とは限りません。

そのため、リスクに関する情報を定期的に更新することが重要です。

環境変化がリスクに与える影響

市場の変化は、リスクの内容や大きさに直接影響を及ぼします。

例えば

・金利の上昇

債券型ファンドの価格が下落するリスクを増大させる。

・為替変動

海外資産への投資で想定外の損失が発生する可能性が高まる。

・地政学的リスク

政治的な不安定さが市場に影響を与える。

情報を更新する具体的な方法

リスク情報を常にアップデートするためには、以下のような方法を活用すると良いでしょう。

  • 定期的に運用報告書を確認する。
  • 信頼できるニュースや市場レポートを購読する。
  • ファンド運用会社のウェブサイトをチェックする。

まとめ

ファンドのリスクとは、投資における不確実性そのものを指しますが、それを正しく理解し活用すれば、大きなチャンスをつかむことができます。

リスクとリターンの関係を学び、適切な情報を収集していくことで、投資判断の質を向上させられます。

また、感情に流されず冷静な投資を行うためには、リスクの定量的な把握が欠かせません。

当記事で解説したリスク管理の基本を活用し、リスクを恐れるのではなく、うまくコントロールして、より安心で効果的な投資を目指してください。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

Action Hub編集部

このライターの記事を見る

市場の最新動向、専門家の分析、独自のリサーチレポートなどを通して、価値ある情報をハイエンドな投資家に提供します。

Share この記事をシェアする !

Related Articles 関連記事

Top Articles 人気記事

Contact お問い合わせ

投資の相談や気になることがあれば、
Action合同会社までお気軽にお問い合わせください。

免責事項について

当ウェブサイトは、弊社の概要や業務内容、活動についての情報提供のみを目的として作成されたものです。特定の金融商品・サービスあるいは特定の取引・スキームに関する申し出や勧誘を意図したものではなく、また特定の金融商品・サービスあるいは特定の取引・スキームの提供をお約束するものでもありません。弊社は、当ウェブサイトに掲載する情報に関して、または当ウェブサイトを利用したことでトラブルや損失、損害が発生しても、なんら責任を負うものではありません。弊社は、当ウェブサイトの構成、利用条件、URLおよびコンテンツなどを、予告なしに変更または削除することがあります。また、当ウェブサイトの運営を中断または中止させていただくことがあります。弊社は当サイトポリシーを予告なしに変更することがあります。あらかじめご了承ください。