投資基礎知識
投資に興味を持っている、もしくはすでに投資している人の中で「インパクト投資って何?概要や拡大している理由について知りたい。」「ESG投資と異なる点について知りたい。」「インパクト投資のメリット・デメリットについて知りたい。」と思っている方も多いのではないでしょうか?
当記事では、このような疑問を解決していきます!記事を最後まで読んでいただければ、これらの疑問について解決できると思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
それでは解説していきます!
目次
目次
インパクト投資とは
インパクト投資とは、財務的な収益を求めながら、環境的かつ社会的なインパクトの創出を目指す投資手法です。このインパクトは、事業活動によって生まれた環境的・社会的な効果や変化を指し、その影響の期間が長期でも短期でも問題ありません。
従来のリターンとリスクの評価軸に、第三の軸として「インパクト」を加えて行う投資がインパクト投資です。インパクトとは、一言でいうと環境的な変化および社会的な効果を意味します。
インパクト投資によって生じる環境的・社会的な効果や変化は、世界的に見てもポジティブな要素であり、その効果は測定可能である必要があります。また、インパクト投資は、SDGs(持続可能な開発目標)の実現という観点からも注目を集めています。
SDGsを達成するためには、年間で5兆ドル〜7兆ドルが世界で必要と言われており、民間の企業や金融機関からの積極的な投資が不可欠です。SDGsで必要とされる資金調達の手段として、インパクト投資が注目されています。
インパクト投資が拡大している理由
インパクト投資が拡大している理由は、以下の3つです。
ジェンダー投資の拡大
ジェンダー投資は、男女を問わず平等な社会の実現を目指す投資であり、具体的には社会における女性の地位を向上させることを推進し、社会的および経済的な立場の向上を支援する取り組みです。内閣府男女共同参画局の「女性活躍とSDGs」によると、機関投資家の約7割が、企業業績に影響を与えるという理由で、女性が活躍する情報を投資判断に使用しています。
SDGsの目標の一つにもジェンダー平等があり、世界的なジェンダー投資への動きも活発化しています。ジェンダー投資は、女性の社会的な地位の向上だけでなく、移民のように不当な差別を受ける人々にも効果があるため、インパクト投資と親和性が高いです。
気候変動対策
地球温暖化などの気候変動に対する対策は、金融業界にも大きな影響を与えています。気候変動への対策が不十分だと、食料不足や自然災害の発生などの深刻な問題が生じ、投資による利益が減少する可能性があります。
温室効果ガスの二酸化炭素排出量をゼロにすることを目標とする脱炭素社会への取り組みが世界的に加速しており、多くの資金を調達するために投資家の行動が重要です。投資家にも、企業における気候変動の潜在的リスクを確認したいというニーズが増加しています。
そのため、企業は気候変動への対策を公表することが求められています。
SDGs達成への取り組み推進
2015年9月に国連総会でSDGsが正式に採択されたことをきっかけに、国際的な環境問題への取り組みが拡大しています。貧困や環境問題といった社会的課題を解決するため、SDGsでは17項目の目標と169のターゲットが定められています。
SDGsの実現には、前述のように年間で約5〜7兆ドルが必要とされており、インパクト投資を通じて民間の資金が市場に流れ込み、積極的な投資が期待されています。スイスのUBSは、SDGs実現に向けたコミットメントの一環として、5年間で5億ドルの資金をインパクト投資に充てるとしています。
インパクト投資の要素
インパクト投資の要素を4つ紹介します。
意図を持っている
意図を持つことは、インパクト投資において明確な方針や戦略があることを意味します。具体的には、インパクトや財務的リターンに関連する目標を設定し、その目標達成のために施策を立案して実行します。また、収益目標達成と同時に、社会的課題の解決や持続可能な社会の実現への貢献が求められます。
投融資の収益
インパクト投資は、社会的リターンと財務的リターンの両立を目指します。ここで掲げられる財務的リターンは、市場で競争力を持つ水準か、それに準ずる水準を目指すこともあります。
インパクト投資は収益を追求する点で慈善事業とは異なり、フィランソロピー(慈善活動)と混同しないようにしましょう。一定の収益を求めるものであり、投資家の立案する戦略によってリスクを調整した後の市場金利と同等の水準が求められることもありますが、市場水準に達していない収益も許容される場合があります。しかし、いずれにしても収益を追求するという点では、慈善事業とは異なります。
多様な資産
インパクト投資は、リースや融資、株式投資などさまざまな資産クラスを対象とし、財務的リターンを追求します。助成金や補助金、寄付などはインパクト投資には該当しません。
インパクト評価の実施
インパクト評価は、投資によって生じた環境的・社会的リターンを評価するものです。この評価により、投資家は自社や企業の活動だけでなく、投資による環境的・社会的な影響を理解し、持続可能な事業戦略を立案できます。
また、投資対象の企業や投資家が、環境や社会にどの程度貢献しているかが明確になるため、インパクト面での効果が具体的に分かります。
ESG投資との違い
インパクト投資と混同されることが多い「ESG投資」についても説明します。ESG投資とは、環境・社会・ガバナンスに配慮した投資のことです。
持続可能性や社会的責任を実現しつつ、財務的な利益を追求する点では、インパクト投資と共通していますが、ESG投資は特定の業種や企業に対して、ESGに配慮しているかどうかを基準に投資を行うスタイルが特徴です。
一方で、インパクト投資は、ESG投資に比べて、投資によって得られる環境的・社会的な成果を重視する投資スタイルです。特に、投資の結果としてのインパクト評価を重視している点が、ESG投資との大きな違いです。
インパクト投資のメリット
インパクト投資のメリットは、以下の3つです。
環境や社会に貢献できる
インパクト投資は、利益獲得が見込めることに加え、投資によって環境貢献や社会貢献が可能です。そのため、投資を通じて環境や社会に貢献したいという意識の高い方から注目を集めています。
安定した長期の収益が期待できる
インパクト投資の対象となる企業は、環境貢献や社会貢献を目的としていることが多いです。大きな利益を短期間で得るのは難しい場合もありますが、環境や社会貢献が世界的に注目されている現在、将来的にも有望なテーマとされているため、長期的に安定した収益が期待できます。
多様なテーマがある
インパクト投資には、環境や社会に貢献するという幅広いテーマがあります。そのため、投資家は自分の関心に合ったテーマを見つけることができます。たとえば、環境面で貢献したいと考える人であれば、発展途上国の水問題の解決に取り組む企業に投資することも、ガスや電気などのインフラ整備に取り組む企業に投資することもインパクト投資に含まれます。
インパクト投資のデメリット
インパクト投資にはメリットがある一方で、デメリットも存在します。主なデメリットとして、短期間で大きな利益を上げるのは難しいことが挙げられます。
環境貢献や社会貢献は、社会的に見て非常に重要な取り組みであるものの、利益に必ずしも直結するわけではありません。長期的には大きな利益を得られる場合もありますが、短期間では含み損になる可能性もあります。
インパクト投資の課題
インパクト投資には以下の3つの課題があります。
プレーヤーが足りていない
プレーヤーが不足しているとは、インパクトを創出する人材が足りていないことを意味します。たとえば、インパクト投資で資金提供を受けた起業家が環境的・社会的課題を解決するためには、長期間の支援が必要です。
財務的な支援に加えて、さまざまな専門家からの支援が受けられる体制を整え、インパクトを創出する人材を増加させていくことが重要です。
社会的基盤が足りていない
社会的基盤が不足しているとは、インパクト投資において、概念が明確に定義されていないため、機関投資家や金融機関に対して必要なアプローチができていないことがあります。また、評価手法が確立されていないことや、資本市場への組み込みが不十分な点も課題です。
このような社会的基盤をしっかりと固めない限り、今後インパクト投資を推進することは難しいでしょう。
認知および理解が足りていない
認知および理解が不足しているとは、「インパクト投資」という言葉自体が十分に認知されていないことを指します。一般市民の間でも認知度が低く、金融機関でも理解が不十分な場合が多いです。機関投資家においても、世界的な潮流の変化に対して理解が追いついていないことがあります。
また、日本社会では「投資」自体がまだ浸透しておらず、忌避したり、関心がなかったりする層が一定数存在していることも問題です。
インパクト投資の今後
インパクト投資の市場規模は、現在拡大傾向にあります。その理由は、SDGsへの注目やジェンダー投資の拡大、環境への配慮意識の向上などです。
大手金融機関を中心に、日本でもインパクト投資に注目が集まっており、投資信託でもインパクト投資に取り組む商品が増えています。環境配慮や社会貢献が重要視される昨今、インパクト投資は今後さらに拡大する可能性が高いです。
また、環境配慮や社会貢献を行わない企業は、将来的に淘汰される可能性が高く、インパクト投資は将来的に当たり前の投資手法になると予測されます。当然、現段階ではすべての企業が環境や社会に配慮しているわけではありません。
この点については、今後の改善が期待されます。
まとめ
インパクト投資とは、財務的な収益を追求しながら、環境的および社会的なインパクトを創出することを目指す投資手法です。インパクト投資が拡大している理由には、ジェンダー投資の拡大や気候変動対策の強化、SDGs達成に向けた取り組み推進などがあります。
インパクト投資のメリットとして、環境や社会に貢献できる、安定した長期の収益が期待できる、多様なテーマがあることが挙げられます。その一方で、プレーヤーが足りていない、社会的基盤が足りていない、認知および理解が不足しているといったデメリットも存在します。
そのため、投資に興味を持っている方や挑戦しようと考えている方は、インパクト投資の概要やメリット・デメリット、今後の将来性について十分に理解した上で検討することが重要です。
Share この記事をシェアする !