
投資基礎知識
投資先企業の「収益力」や「経営の効率性」を数値で把握できる指標をご存じでしょうか?
それが「経常利益率」です。
企業が本業だけでなく、周辺事業や財務活動からどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す重要なデータです。
個人投資家にとっては、投資判断を行う際の羅針盤とも言えるでしょう。
当記事では、経常利益率とは何か、その定義や計算方法、さらには企業分析にどのように活用できるのかを詳しく解説します。
投資の精度を高めたい人は、ぜひご覧ください。
目次
企業の経営状況や収益力を評価する際に重要となる指標の一つが「経常利益率」です。
特に個人投資家にとって、投資先企業の実力や安定性を見極めるためには欠かせないデータとなります。
ここでは、経常利益率の基本的な定義や計算方法、そしてこの指標が示す企業の収益力について解説します。
理解を深めることで、投資判断に役立てることができるでしょう。
経常利益率とは、企業の売上高に対する経常利益の割合を示す指標です。
簡単に言えば、「企業が本業とその周辺事業でどれだけ効率よく利益を生み出しているか」を示す数字です。
経常利益は、企業が得た営業利益に営業外収益を加え、そこから営業外費用を差し引いて算出されます。
経常利益率の計算式
経常利益率の基本的な計算式は以下の通りです。
経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 売上高 × 100
経常利益:企業の本業(営業活動)と本業以外の活動(投資の利息収入や支払い利息など)から得られた利益
売上高:企業が商品やサービスを販売して得た総収入
例えば、ある企業の売上高が1,000万円で経常利益が100万円だった場合、経常利益率は以下のようになります。
経常利益率=100万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 10%
この数値が高いほど、売上に対して利益が効率的に出ていることを意味します。
経常利益と営業利益の違い
経常利益と似た指標に「営業利益」がありますが、両者には違いがあります。
営業利益:本業(事業活動)から得られた利益のみを示す
経常利益:本業に加え、営業外の収益や費用も含んだ利益
つまり、経常利益は企業の「本業の収益力」と「周辺事業の収益力」両方を反映しているため、企業の総合的な収益性を判断する際に有用です。
経常利益率を理解し計算できるようになると、企業の利益構造や経営の効率性がより明確に見えてきます。
経常利益率は、企業がどれだけ効率よく利益を上げているか、つまり「収益力の高さ」を示します。
特に、投資家にとっては投資先企業の経営が順調かどうかを見極める重要な指標となります。
高い経常利益率が示すポイント
経常利益率が高い企業には、いくつかの共通する特徴があります。
・コスト管理が徹底されている
経常利益率が高い企業は、製造コストや販売費、一般管理費を適切にコントロールしている場合が多いです。
無駄な支出を抑え、効率的に利益を生み出せる体制が整っています。
・高付加価値の商品・サービスを提供している
商品やサービスに高い付加価値があると、他社との差別化が図れ、利益率が上昇します。
例えば、ブランド力の高い企業や独自技術を持つ企業は、高い利益率を維持しやすい傾向があります。
・安定した収益基盤がある
経常利益率が高い企業は、経済状況の変化や市場の競争に強い収益基盤を築いている場合が多いです。
特に、複数の収益源を持ち、安定的に利益を生み出している企業は、経常利益率も安定します。
経常利益率の低い企業が抱える課題
一方で、経常利益率が低い企業には、次のような課題が考えられます。
・コスト管理の甘さ
売上が伸びているのに利益が出ない場合、過剰な経費や無駄なコストが利益を圧迫している可能性があります。
・競争力の低さ
商品やサービスに競争力がなく、価格競争に巻き込まれている場合、利益率が低くなりやすいです。
・借入や支払い利息の増加
営業外費用(支払い利息や為替損失など)が多い企業は、経常利益率が低下します。
過剰な借入や財務体質の弱さが要因となることもあります。
経常利益率を投資判断に活かすポイント
投資家が経常利益率を活用する際には、以下の点を意識すると良いでしょう。
・業界平均との比較
経常利益率は業界によって基準が異なります。
例えば、製造業とIT業界では利益率の水準が大きく異なるため、業界平均と比較して高いかどうかを確認しましょう。
・過去数年の推移を確認する
単年度だけでなく、過去数年間の経常利益率の推移を見ることで、企業の収益力の安定性や成長性を把握できます。
・他の財務指標との組み合わせ
経常利益率だけでなく、売上高成長率や自己資本比率、ROE(自己資本利益率)などの指標と組み合わせることで、総合的な企業分析が可能になります。
経常利益率は、企業の経営の効率性や収益力をシンプルに示す指標です。
個人投資家としては、企業の利益率の高さや安定性をしっかりと見極めることで、成長性の高い投資先を選ぶ手助けとなるでしょう。
投資先企業の実力や経営効率を判断する際、利益率は欠かせない指標の一つです。
特に「経常利益率」は、企業が本業の収益力に加えて、経営全体でどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。
個人投資家にとっては、企業の持続的な成長性や財務の健全性を見極める上で大きな手がかりとなるでしょう。
ここでは、経常利益率が投資判断にどのように役立つのか、そして他の利益率との違いや関連性について詳しく解説します。
経常利益率は、企業の「稼ぐ力」と「経営の安定性」を数値として把握するために非常に重要な指標です。
個人投資家が投資判断を行う際、経常利益率が果たす役割を理解することで、より合理的で確実な判断が可能になります。
経常利益率が示す企業の安定性
経常利益は、営業利益に加えて、営業外収益(例えば、受取利息や配当金収入など)と営業外費用(支払利息や為替損失など)を加減したものです。
そのため、経常利益率は単に「本業の収益力」だけでなく、「企業経営全体の安定性」も反映しています。
例えば、経常利益率が高い企業は、以下のような安定性があると考えられます。
本業が順調である:売上高に対して効率よく利益が上がっている。
財務が健全である:支払い利息や借入金の負担が少ない。
営業外収益が堅調である:投資から得られる利息収入や配当金が安定している。
このように、経常利益率の高さは本業だけでなく、財務面や投資活動も含めた経営全体の強さを示します。
投資先企業を選ぶ際のポイント
投資先企業の経常利益率を見る際には、以下の点に注目しましょう。
業界平均との比較:業界ごとに経常利益率の基準は異なるため、同業他社と比較することでその企業の競争力が見えてきます。
数年単位での推移:経常利益率が安定して高い企業は、継続的に利益を生み出す力があると判断できます。
逆に、急激に低下している場合は、経営課題が潜んでいる可能性があります。
売上高とのバランス:売上高が伸びているのに経常利益率が低下している場合は、コスト増加や利益効率の低下が起きているかもしれません。
経常利益率を投資判断に取り入れることで、短期的な業績に惑わされず、長期的に安定した収益を上げ続ける企業を見つけ出すことができます。
経常利益率の重要性を理解するためには、他の利益率との違いや関連性について知っておく必要があります。
各利益率には異なる役割があり、投資家が企業の真の実力を把握するには、複数の指標を組み合わせて分析することが欠かせません。
利益率の種類とそれぞれの意味
利益率には、主に以下の3つの種類があります。
・営業利益率
営業利益率は、本業のみの収益力を示します。
営業利益を売上高で割って算出され、本業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを表す指標です。
計算式:営業利益 ÷ 売上高 × 100
営業利益率が高い企業は、本業のコスト管理が優れており、強い競争力を持つと判断できます。
・経常利益率
経常利益率は、本業の収益に加え、営業外の収益・費用も含めた利益率です。
財務の健全性や営業外活動の影響も反映されるため、企業全体の安定性を判断するのに適しています。
計算式:経常利益 ÷ 売上高 × 100
・純利益率
純利益率は、最終的な利益率を示します。
経常利益から税金や特別損益を差し引いて算出され、株主への利益還元の源泉となる指標です。
計算式:純利益 ÷ 売上高 × 100
純利益率が高い企業は、最終的に株主への利益配分が多く、投資魅力が高いと考えられます。
経常利益率と他利益率の関連性
経常利益率は、営業利益率と純利益率の中間に位置し、以下のような関連性があります。
・営業利益率との関連
経常利益率が営業利益率より高い場合、営業外収益(例:投資利益)が寄与している可能性があります。
一方で、経常利益率が低い場合は、支払い利息などの営業外費用が利益を圧迫していると考えられます。
・純利益率との関連
経常利益率が高くても、最終的な純利益率が低い場合は、特別損失や税金の負担が大きいことが考えられます。
最終的な利益率まで確認することで、企業の収益性をより正確に把握できます。
複数の利益率を組み合わせた分析
企業の収益力を評価する際には、以下のステップで利益率を総合的に確認すると効果的です。
営業利益率の確認:本業の収益力を評価する。
経常利益率の確認:営業外収益・費用を含めた全体の収益力を確認する。
純利益率の確認:最終的な利益水準と株主還元力を評価する。
このように利益率を多面的に分析することで、企業の強みや弱みを正確に把握し、投資リスクを軽減することが可能になります。
経常利益率が高い企業は、経営の質や市場での競争力が優れている場合が多く、個人投資家にとっても魅力的な投資先となります。
経常利益率は、売上に対して企業がどれだけ効率よく利益を生み出しているかを示す重要な指標です。
そのため、高い経常利益率を維持する企業は、経営戦略や事業内容に強みがあり、持続的な成長が期待できます。
ここでは、経常利益率が高い企業に共通する特徴として、「効率的な経営とコスト管理」および「競争優位性と高付加価値ビジネス」について解説します。
経常利益率が高い企業は、無駄のない経営を行い、コストを徹底的に管理していることが多いです。
これは、売上を最大化しながら、利益を確保するために欠かせない要素です。
コスト管理の徹底
経常利益率が高い企業では、コスト管理が非常に優れている点が特徴です。
具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
生産効率の向上:製造業では、最新の設備投資や技術革新により生産ラインを効率化し、原価を削減する。
無駄の排除:業務フローの見直しやリモートワークの導入により、間接費や人件費を抑える。
資材・仕入れの最適化:仕入れ先の見直しや規模の経済を活用して、仕入れコストを低減する。
例えば、ある製造業の企業では、生産ラインをAIで最適化し、不良品率を低下させることでコスト削減と利益率向上を実現しました。
このような工夫は、経常利益率の底上げに大きく貢献します。
経営資源の効率的な配分
企業の経常利益率を高く保つためには、経営資源(人・モノ・カネ)の最適な配分が欠かせません。
効率的な経営では以下のような施策が見られます。
人材配置の最適化:社員のスキルや適性に合わせて配置し、生産性を高める。
IT技術の導入:デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、業務の自動化や効率化を図る。
重点分野への投資:成長性の高い事業や利益率の高い商品・サービスに経営資源を集中させる。
効率的な経営とコスト管理が実現している企業では、限られたリソースを最大限に活用することで高い利益率を維持しています。
個人投資家としては、企業の経営効率やコスト構造に注目し、安定した利益を生み出せるかを見極めることが重要です。
経常利益率が高い企業のもう一つの特徴は、競争優位性を確立し、高付加価値ビジネスを展開している点です。
こうした企業は、他社との差別化を図り、安定した利益を確保しています。
競争優位性を支えるビジネスモデル
競争優位性とは、市場において他社よりも優れたポジションを築くことを意味します。
経常利益率が高い企業では、以下のような要素が競争優位性を支えています。
独自の技術や特許:他社が真似できない技術力や知的財産を持ち、市場で独占的な地位を築いている。
ブランド力:強いブランド力を背景に、価格競争に巻き込まれることなく高い利益率を維持する。
顧客基盤の強さ:顧客との長期的な信頼関係を構築し、リピートビジネスや安定した売上を確保する。
例えば、あるIT企業は独自のクラウド技術を強みに持ち、他社との差別化に成功しています。
その結果、価格競争を避けながら高い利益率を維持し、経営の安定化を実現しています。
高付加価値ビジネスの展開
高付加価値ビジネスとは、顧客に対して単なる商品やサービスを提供するだけでなく、付加価値を付け加えることで利益率を高めるビジネスモデルです。
以下のような特徴があります。
商品やサービスのプレミアム化:高品質な商品や独自のサービスを提供し、価格設定を高めに維持する。
サブスクリプションモデルの導入:継続的な収益を確保できるビジネスモデルを展開する。
顧客ニーズの先取り:市場の変化を敏感に捉え、新たな付加価値を生み出す商品やサービスを展開する。
例えば、健康食品を扱う企業では、単なる栄養補助食品の提供にとどまらず、健康コンサルティングやライフスタイル改善のサポートを付加することで、高付加価値を提供しています。
これにより、高い価格設定とリピート率の向上を実現し、経常利益率を押し上げています。
経常利益率は企業の「稼ぐ力」と「経営の効率性」を数値化し、個人投資家の投資判断に大きく役立つ指標です。
経常利益は本業の利益に加え、営業外の収益や費用を含むため、企業経営全体の安定性も示します。
高い経常利益率を持つ企業は、コスト管理の徹底や高付加価値ビジネスで競争優位性を確立していることが多く、投資先として注目に値します。
一方、業界平均や他の指標と組み合わせた分析が、より精度の高い投資判断に欠かせないポイントです。
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