退職金の相場はいくら?企業規模・勤続年数・業種別に徹底解説

退職金の相場はいくら?企業規模・勤続年数・業種別に徹底解説

退職金運用

退職金とは何か、受け取り方法や支給条件、企業規模や勤続年数による相場の違い、さらには税制や老後資金対策について幅広く解説します。大企業・中小企業・公務員それぞれの傾向や、受け取り時の節税ポイントも紹介。iDeCoやNISAなどの活用法も紹介し、退職後の資金計画に役立つ情報を詳しくおつたえします。今から備えるべき老後の安心を、この一記事でチェックしていきましょう。

退職金とは?制度の基本をおさらい

退職金とは、長年勤めた会社を離れる際に支給される金銭的な報酬で、一般的には福利厚生の一環として位置づけられています。支給額は勤続年数や最終給与、社内の定められた規定に基づいて算出され、定年での退職時には特に高額になるケースが多く、老後資金の中核として重要な役割を果たします。

ただし、すべての企業に制度があるわけではなく、内容も会社ごとに異なるのが実情です。まずは自社の就業規則を確認し、内容が不明な場合は人事部門や社労士への相談を検討すると良いでしょう。退職金を確実に受け取るためには、制度の仕組みを理解し、定められた手続きにとおりに沿って準備を進めることが大切です。

この記事では、退職金の仕組みとポイントをわかりやすく解説していきます。

退職金制度の仕組みと種類

退職金制度には大きく分けて3つの形態があります。

  • 「退職一時金制度」:退職時にまとまった金額を一括で受け取る方式で、最も一般的です。
  • 「確定給付年金(DB)」:あらかじめ決められた算定方法に基づいて将来の受取額が保証される仕組みであり、企業側が運用リスクを負担します。
  • 確定拠出年金(DC)」:従業員が運用するスタイルで、将来の給付額は運用結果によって変動します。これらの制度の採用は、企業の方針や規模、業種によって大きく異なり、特に中小企業では制度自体がないケースもあります。

自分の勤め先がどの制度を採用しているかを確認し、それに応じた資産形成を意識することが大切です。

退職金の支給タイミングと条件

退職金は、一般的には「定年退職」「自己都合退職」「会社都合退職」などのケースで支給されます。

中でも定年退職は最も支給額が大きくなる傾向があり、会社都合の場合も優遇される場合があります。支給時期は企業によって異なりますが、多くは退職日から1〜2か月以内に振り込まれます。

ただし、退職金制度があっても、在職期間が短い場合や一定年数に満たないと支給対象外となることもあるため、事前の就業規則の確認が欠かせません。また、申請書類の提出期限なども企業ごとに異なるため、事務的な手続きを見落とさないよう注意が必要です。

退職一時金・年金受取の違い

退職金の受け取りには主に「一時金方式」と「年金方式」の2つがあります。

  • 一時金方式:退職時にまとまった金額を一括で受け取る方法で、住宅ローンの返済やまとまった支出への充当が可能です。
  • 年金方式:数年に分けて定期的に受け取る形で、生活費として計画的に使いたい方に向いています。

どちらを選ぶかによって税金の計算方法も異なり、一時金は「退職所得控除」+「1/2課税」が適用されるのに対し、年金受取は雑所得として毎年課税対象になります。ライフプランや税負担を踏まえ、自分に合った受け取り方法を選ぶことが将来の安心につながります。

退職金の平均相場はいくら?【企業規模別】

退職金の金額は企業の規模によって大きく差が出るのが一般的です。この章では、企業の規模ごとに退職金の相場を丁寧に解説し、自分の立場と照らし合わせながら見通しを立てるヒントを提供します。

大企業の退職金相場

大企業では、長期的な雇用を前提にした退職金制度を整えているケースが多く、平均支給額も高めです。

例えば、定年退職時の相場としては2,000万円〜2,500万円程度が目安とされ、勤続30年以上の従業員であればさらに高額になる傾向があります。これは、最終給与や勤続年数に応じた計算方式を採用していることが主な理由です。また、企業年金や確定給付年金などと併用されている場合、実質的な受取額はさらに増える可能性があります。

安定した雇用環境とセットで用意された制度設計のため、計画的な資産形成に役立つ点が魅力です。

中小企業の退職金相場

中小企業における退職金の支給額は、大企業に比べて控えめな傾向が強く、平均的な支給額は数百万円〜1,000万円程度が一般的です。

さらに、企業によっては退職金制度が導入されていないこともあり、従業員が自らiDeCoなどで備える必要があるケースもあります。ただし、中退共(中小企業退職金共済)などの制度を導入している企業も増えており、適切に活用すれば一定の金額を確保することは可能です。

自社の制度内容を早めに確認し、不足分を補う方法を検討することが、老後の安心につながります。

公務員や団体職員の退職金相場

公務員や自治体・公益法人などの団体職員は、安定的な退職金制度が整備されており、定年退職時の支給額は概ね1,800万円〜2,300万円程度が相場とされています。

これは職務の安定性と国の制度に基づいた明確な計算式によって支給額が決まるためで、長期勤務するほど金額は上昇します。また、共済年金や退職手当といった制度が統合されていることから、受け取りの見通しも立てやすく、民間企業よりも計画的な資産設計がしやすいのが特徴です。

公務員として働いている方は、制度の内容を理解して、退職後の資金活用にも備えておきましょう。

退職金の相場を【勤続年数別】に見る

退職金の支給額は勤続年数に大きく左右されるため、何年働いたかによって金額の差が顕著に現れます。

ここでは、10年未満、10年~20年、20年以上といった年数ごとに、退職金の目安額や制度上の特徴を整理し、自分の働き方に応じた退職金の見通しを把握するための参考情報を紹介します。

10年未満のケース

勤続10年に満たない場合の退職金は、企業によって大きく対応が異なります。特に5年以下の短期勤務の場合、「短期退職手当等」として扱われ、税制上の優遇措置が受けられない可能性もあるため注意が必要です。

相場としては、数十万円から100万円未満にとどまることが多く、企業によってはそもそも支給対象外とされることもあります。ただし、外部制度である中退共や個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用している場合は、在籍年数に応じた積立額を自ら確保している可能性もあります。

短期での退職を予定している方は、制度の内容や条件を早めに確認しておくことが重要です。

10~20年のケース

勤続10年から20年の間に退職するケースでは、ある程度の金額が退職金として支給されることが一般的です。支給額は企業規模や職種によって差はあるものの、約200万円〜800万円程度が目安として多いとされています。

この年数帯になると、退職金制度の恩恵をある程度受けられるラインに入るため、老後資金の一部としての活用も視野に入ってきます。また、自己都合退職と会社都合退職で支給額が変わるケースもあるため、退職理由が相場に与える影響も押さえておきたいところです。加えて、確定拠出年金や企業年金が併用されている場合は、総合的な受取額がさらに増えることがあります。

20年以上(定年退職)のケース

20年以上にわたる勤務を経ての定年退職は、退職金が最も多く支給される典型的なケースです。この場合、企業によっては1,000万円〜2,000万円を超える水準に達することもあり、長期勤務への感謝や功労への評価が反映された結果といえます。

特に大企業や公的機関では、退職金制度が手厚く設計されており、企業年金や退職一時金の併用によって実質的な受取額がさらに増える仕組みもあります。

この金額は老後の生活資金として大きな支えになる反面、税務処理や受取方法の選択にも配慮が必要です。最適な受け取り方を選ぶためにも、退職前から制度の詳細を理解しておくことが重要となります。

業種・職種による退職金の違い

退職金の支給水準は、同じ勤続年数でも業種や職種によって大きな差が見られます。これは、企業ごとの賃金体系や業界の利益率、または雇用慣行などが影響するためです。

本章では、代表的な業界ごとの退職金の特徴と傾向を紹介し、将来設計のヒントとなる情報をお伝えしていきます。

製造業・建設業の退職金

製造業や建設業では、長期雇用が基本とされており、退職金制度も比較的堅固に整備されている傾向があります。

特に製造業の大手企業では、従業員の忠誠心や勤続年数に応じて一定の基準に従い支給額が決まるため、30年以上勤務した場合には2,000万円以上の退職金を受け取るケースもあります。

建設業では中小企業が多くを占めるため相場はやや低めですが、建退共(建設業退職金共済制度)に加入していれば、勤続年数ごとに掛金が積み立てられ、一定の金額を確保することが可能です。

このように、就業先がどの制度を導入しているかを確認することで、老後資金の見通しも立てやすくなります。

医療・福祉業界の退職金

医療・福祉業界では、勤務先の法人格や設立母体によって退職金制度の有無や支給水準が大きく異なります。

例えば、公立病院や社会福祉法人では共済制度が整っているため、勤続年数に応じた退職金が支払われるケースが多く、20年以上勤務すれば1,000万円前後の受取も期待できます。しかし、個人経営のクリニックや小規模施設では退職金制度が導入されていないことも珍しくなく、自助努力による老後資金の準備が求められることもあります。

また、パートや契約職員といった非正規雇用の比率が高いことも、退職金に関する格差を生みやすい要因です。雇用形態にかかわらず、制度の確認と早期対策が重要です。

IT・サービス業の退職金

IT業界やサービス業は比較的新しい産業であることから、退職金制度を持たない企業も一定数存在します。

特にベンチャー企業や外資系企業では、年俸制を採用しているケースも多く、退職金を含めた給与設計となっていることが一般的です。

一方で、大手IT企業や老舗サービス業では、独自の退職一時金制度や企業年金制度を設けている場合もあり、勤続20年超で1,000万円以上を支給される例も見られます。しかし、業界全体としては転職やキャリアチェンジが活発なため、長期的な在籍を前提とした制度設計は少数派です。

したがって、個人でiDeCoやNISAなどを利用して資産形成する必要性が高い分野といえます。

退職金の受け取り方法とその違い

退職金は、受け取り方によって手取り額や税金の負担、ライフプランへの影響が大きく異なります。主な選択肢としては「一時金方式」「年金方式」、そして両者を組み合わせた「併用方式」があります。それぞれにメリットと留意点があり、自分の将来設計や収支バランスに応じた選択が求められます。

この章では、これらの違いを分かりやすく解説し、選択時に意識すべきポイントを紹介します。

一時金受け取りのメリット・デメリット

一時金受け取りは、退職金を一括で受け取る方法です。

メリット

  • 住宅ローンの完済や大きな出費に充てたい人向け
  • 税制面でも、「退職所得控除」と「1/2課税」の仕組みによって、一定額までは税負担が抑えられるのが特徴

デメリット

  • 短期間でまとまった資金を手にするため、使い方によっては将来の生活資金が不足するリスクもある
  • 一度に受け取ることで資産が増える分、社会保障制度の負担増加(介護保険料の上昇など)にもつながる可能性がある

事前の資金計画が不可欠です。

年金形式での受け取りとその特徴

年金形式での受け取りは、退職金を数年~十数年にわたって分割で受け取る方法です。

メリット

  • 毎月もしくは年単位で定額が支給されるため、安定した収入源として老後の生活を支える点で優れている。特に長寿化が進む現代においては、資産の寿命を延ばす手段としても注目されている

デメリット

  • 税制面では「雑所得」として毎年課税されるため、トータルで見ると税負担が重くなる場合がある
  • 受取期間中に物価が上昇すれば実質的な価値が目減りする懸念がある

インフレリスクへの対応も視野に入れた運用が求められます。

一時金+年金の併用型とは?

一時金と年金の併用方式は、それぞれのメリットを活かしつつリスクを分散できる柔軟な受け取り方法です。

メリット

  • 例えば、一部を一括で受け取って住宅ローンの返済や資産形成に充て、残りを年金形式で受け取ることで生活資金として長期的に利用が可能
  • 税制上も一時金部分に退職所得控除が適用され、年金部分は雑所得として課税されるため、手取り額の最適化を図ることが可能です。

デメリット

  • 併用が可能かどうかは勤務先の制度に依存するため、早めに就業規則や人事部門への確認が必要

資金の使い道と受取時期のバランスを考慮したうえで、計画的に選ぶことが重要です。

退職金にかかる税金の基本知識

退職金を受け取る際には、通常の給与と異なる「退職所得」として扱われ、専用の課税ルールが適用されます。これは長年の勤務に対する報奨という性質を踏まえ、税負担を軽減するために特別な控除や課税方式が設けられているのが特徴です。

主な仕組みとしては、一定額の「退職所得控除」を差し引いたうえで、その差額の1/2に対して所得税・住民税が課されるというもの。また、退職所得は分離課税の対象であり、他の収入とは別枠で税額が算出されます。

このように、退職金の課税ルールは独自の仕組みがあるため、制度の内容を理解しておくことで、手取り額の見通しが立ちやすくなります。

退職所得控除の計算方法

退職所得控除は、退職金の課税対象額を減らすために設定された制度で、勤続年数に応じた金額が控除されます。

計算方法

  • 「勤続年数×40万円(20年以下)」
  • 「800万円+(勤続年数−20年)×70万円(21年目以降)」というルールに従って算出されます。

例えば、勤続25年の人であれば「800万円+(5年×70万円)=1,150万円」が控除対象となります。この控除額を退職金から差し引いたうえで、残った金額の半分に税率が適用される仕組みです。したがって、控除の仕組みを正確に把握しておくことで、課税額の目安がつきやすくなり、退職後の資金設計にも大きなメリットをもたらします。

控除を活かす節税対策のポイント

退職金に対する税負担をできるだけ軽くするためには、退職所得控除の仕組みを最大限に活かすことが重要です。

まず基本となるのは、「退職所得申告書」を提出すること。これを会社に退職前に提出すれば、源泉徴収段階で控除額が適用され、税金が過剰に引かれるのを防げます。

また、複数の退職金がある場合は受け取る年をずらすことで、それぞれに退職所得控除を適用できる可能性が高まり、税額を分散できます。さらに、企業年金や確定拠出年金(iDeCo)などの制度も併用することで、所得区分を分けて課税対象を最適化できるケースもあります。

制度を正しく理解し、計画的に受け取ることで、将来の手取り額に大きな差が生まれることになります。

退職金だけでは不安?老後資金の備え方

退職金はまとまった資金として頼りになりますが、近年は平均寿命の延伸や生活コストの上昇により、これだけで老後の生活費をまかない続けるのは難しいという声も増えています。

特に医療費や介護費、住居の維持費といった予期せぬ出費が重なれば、退職金があっという間に底をつくことも。そこで注目されているのが「自分で備える」老後資金対策です。公的年金だけに頼らず、自助努力によって資産を育てる方法として、iDeCoやNISA、個人年金保険などがおすすめな選択肢として挙げられます。

ここでは、それぞれの特徴や概要を理解し、自分のライフスタイルやリスク許容度に合った組み合わせを選ぶことが、安定した老後を支える鍵となります。

iDeCoで自助努力を

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自ら掛金を拠出して老後資金を積み立てる制度で、税制優遇が大きな魅力です。毎月の掛金は全額が所得控除の対象となるため、節税効果が期待できるほか、運用益も非課税で積み上げられる点が大きなメリットです。

60歳以降に年金や一時金として受け取る際も、退職所得控除や公的年金等控除が使えるため、税負担を軽減しながら資金を活用できます。公的年金の受給額に不安を感じる人にとって、iDeCoは将来の収入源を増やす手段の一つです。

長期的な視点で積立・運用を行うことが前提となるため、早いうちからのスタートが効果を高めます。

NISAを活用した運用

NISA(少額投資非課税制度)は、投資信託や株式などを用いた資産運用のハードルを下げ、非課税で運用益を得られる制度です。

特に老後資金づくりを目的とするなら、「新NISA」を活用することで年間投資枠が拡大し、より自由度の高い運用が可能になります。通常、投資によって得た利益には20%以上の税金がかかりますが、NISA口座を使えばこの税負担を回避できます。短期的な値動きに惑わされず、10年単位の長期スパンでコツコツ資産を育てるスタイルが、老後資金形成には適しています。

退職金と合わせて運用することで、資産を長持ちさせる有力な手段となるでしょう。

個人年金保険で長寿リスクに備える

個人年金保険は、一定期間保険料を支払うことで、将来決まった年齢から年金形式で資金を受け取れる仕組みです。

特に長生きすることによる資金不足、いわゆる「長寿リスク」に備える手段として重宝されています。保険の商品によっては、終身で受け取れるタイプもあり、「万一100歳を超えても年金がもらえる」という安心感が強みです。また、保険料控除の対象となるため、現役世代の節税にもつながります。

退職金や預貯金だけでは不安を感じる方にとって、リスク分散の観点からも有効な選択肢といえるでしょう。公的年金を補完する役割として、計画的に取り入れるのがポイントです。

まとめ

退職金は、勤続年数や企業規模、業種といった背景により支給額や制度に大きな差が出るのが現実です。また、受け取り方の違いによって、最終的な手取りや税金の負担にも差が生じるため、個々の事情に応じた選択が求められます。

一時金・年金形式・併用型といった選択肢のほか、iDeCoやNISA、個人年金保険などお金に関する関連制度を組み合わせて活用することで、老後資金をより安定的に確保することが可能です。将来への不安を減らすためには、今のうちから制度を正しく理解し、自分自身のライフプランや収入状況に合わせた準備を進めることが欠かせません。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

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