退職金2000万円にかかる税金はいくら？計算方法と節税のポイントを徹底解説！

はじめに｜退職金2,000万円を受け取る際の税金はどうなる？

退職金2,000万円を受け取った場合、「思ったより手取りが少ない…」と感じる方も少なくありません。退職金には優遇税制があり、通常の給与とは異なる計算方式が適用されますが、それでも一定の税金は発生します。特に、勤続年数や退職理由によって税額が大きく変わるため、事前の理解と準備が重要です。

本記事では、退職金2,000万円の税金がどのように計算されるのかをわかりやすく解説し、節税対策のヒントも紹介します。

退職金の税金の仕組みと計算方法を理解しよう

退職金は「退職所得」として扱われ、一定の控除額を差し引いた後、さらに1/2に圧縮して課税対象を計算します。これは長年の勤務に対する報酬という性質から、税制上で特別な優遇措置が取られているためです。

計算にあたっては、退職所得控除と呼ばれる制度を活用することで、多くの場合、課税される金額を大きく減らすことが可能です。退職金を受け取る前に、税金の仕組みと計算方法を理解しておくことは、手取り額を把握するうえで欠かせません。

退職金にかかる税金の種類

退職金にかかる主な税金は「所得税」と「住民税」の2種類です。これらは給与所得とは異なり、退職所得という特別な所得区分で課税されます。また、社会保険料の負担がない点も特徴です。退職金が支払われる時点で源泉徴収されるため、基本的には自分で確定申告をする必要はありません。

ただし、再就職や他の所得がある場合は、確定申告で調整が必要になるケースもあります。税額の正確な把握には各税の違いを理解しておきましょう。

退職所得控除の計算方法

退職所得控除は、退職金から一定額を差し引いて課税対象額を減らす制度です。

計算方法は、下記の2段階方式です。

• 「勤続年数 × 40万円（20年以下）」
• 「800万円＋70万円 ×（勤続年数－20年）（20年超）」

例えば、勤続30年の場合、退職所得控除は1,500万円（＝800万円＋70万円×10年）となり、退職金2,000万円であれば、課税対象は500万円となります。この制度により、長年働いた人ほど税負担が軽くなる仕組みです。

退職所得の算出ステップと税率のかけ方

退職所得の税額を算出する手順は、まず退職金から退職所得控除額を引き、その金額を1/2にします。この1/2になった額が「課税退職所得金額」となり、これに対して所得税と住民税がかかります。

例えば、控除後500万円の退職金の場合、課税対象は250万円となり、税率表に基づいて税額を計算します。税率は5%〜45%までの累進課税となるため、正確な金額は国税庁の早見表などで確認するのがよいでしょう。

具体例で見る！退職金2,000万円の税額シミュレーション

退職金にかかる税金は、受け取り方や勤続年数によって大きく変わります。ここでは、退職金2,000万円を受け取る場合の具体的なシミュレーションを3パターン紹介します。

一時金で一括受け取る場合、年金形式に分割する場合、そして一時金と年金の併用といった形式ごとの違いを比較します。自身のケースに近いパターンを確認することで、退職後の資金計画に役立てましょう。

ケース① 勤続30年・2,000万円一時金受け取り

【前提条件】勤続年数30年、退職金2,000万円を一括受け取り。

退職所得控除：800万円＋70万円×10年＝1,500万円

退職所得＝（2,000万円－1,500万円）×1/2＝250万円

所得税（10％）：250万円×10％－9万7,500円＝15万2,500円

住民税：約250万円×10％＝25万円

合計税額：約40万円前後／手取り：約1,960万円

※実際は自治体によって住民税が異なるため要確認。

ケース② 勤続25年・2,000万円を年金形式で受け取る場合

年金形式で退職金を分割受け取りする場合、毎年の年金収入として「雑所得」として課税されます。

例えば、年間200万円ずつ10年間受け取ると仮定すると、年ごとの課税対象は以下の通りです。

• 雑所得＝年金収入－公的年金等控除（195万円程度）＝5万円（年）

所得税や住民税は年ごとに少額で済むケースが多く、トータル税額も抑えられやすいのが特徴。節税を意識するなら、年金形式が有利になることもあります。

ケース③ 一時金＋年金の併用パターン

一時金と年金形式を併用する場合、受取額とタイミングによって課税方法が分かれます。

例えば、一時金で1,000万円、残り1,000万円を10年の年金形式で受け取るケース

• 一時金の退職所得控除：1,500万円→課税対象ゼロ（非課税）
• 年金部分：年間100万円→公的年金等控除の範囲内に収まる可能性大

うまく組み合わせれば、税金をほとんど払わずに済むこともあります。

退職金の受け取り方法は、事前に税金のシミュレーションを行い、最も有利な選択をしましょう。

退職金2,000万円でも確定申告は必要？

退職金は基本的に「退職所得」として扱われ、会社に提出する書類が適切であれば確定申告は不要です。しかし、退職金が2,000万円と高額な場合や、年の途中で退職するケース、年金形式で受け取る場合などでは、例外的に確定申告が必要になることもあります。

確定申告を怠ると、過剰な税金を払ったままになる可能性もあるため、受取方法や退職時期に応じて対応を確認しましょう。以下では具体的な申告が必要となるケースを紹介します。

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合

退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しないと、退職金全額に対して20.42％の税率で源泉徴収されてしまいます。本来は退職所得控除や1/2課税が適用されるため、申告書を出さないと過剰に課税される可能性が高くなります。

この場合、確定申告を行えば本来の課税方法で再計算され、税金が還付される可能性があります。退職時には忘れずに申告書を提出しましょう。

年の途中退職や複数年で受け取るケース

年の途中で退職し、ほかの給与収入や副収入がある場合、所得の合算によって住民税などの負担が増えることがあります。また、退職金を年金形式や分割で複数年にわたって受け取るケースでは、雑所得として毎年課税されるため、各年ごとに確定申告が必要になる可能性があります。

特にiDeCoや企業型DCとの併用受取時には課税区分が複雑になるため、税務署や税理士に相談するのも一案です。

確定申告をすれば税金が戻るケースとは？

退職金の税金が多く引かれていたり、医療費控除や住宅ローン控除が併用できる場合、確定申告によって税金が還付される可能性があります。特に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合や、扶養控除・配偶者控除などを適用し忘れていた場合には、還付額が大きくなることも。

退職時の源泉徴収票や支払明細を元に一度シミュレーションし、還付対象となるかを確認しておくと安心です。

退職金2,000万円の節税対策と注意点

退職金2,000万円は一見大きな金額ですが、受け取り方や手続き次第で税負担に差が出るため、事前の節税対策が不可欠です。特に退職前の準備や受け取り形式の工夫で、課税対象額を大きく抑えることが可能です。また、iDeCoや企業型DCなどの制度を併用することでさらなる控除を受けることも可能です。

一方で、再雇用や再就職によって控除額が変わる場合もあるため、制度の理解と適切なタイミングが重要です。

退職金受け取り前にできる節税準備とは？

退職金を受け取る前にまず行うべき節税対策は、「退職所得の受給に関する申告書」の提出です。これにより、退職所得控除と1/2課税が適用され、大幅な減税が可能になります。また、受け取り時期を調整することで他の所得と重複せず、総所得が抑えられるため節税効果が高まります。

特に退職と同時に他の一時所得がある場合は注意が必要です。税務署やファイナンシャルプランナーへの事前相談も有効です。

iDeCo・企業型DCを活用した控除の仕組み

退職金と併せてiDeCo（個人型確定拠出年金）や企業型DCを受け取る場合、これらも退職所得または公的年金等の雑所得として扱われます。ここで重要なのが「退職所得控除の共有」ルールです。

控除枠を同じ年に重複利用すると非効率になるため、受取時期をずらして別年にすることで、それぞれの控除を最大限活用できます。制度理解が不十分なまま一括受け取りすると、税負担が増えるリスクもあるため注意が必要です。

再雇用・転職の影響にも注意

退職後すぐに再雇用されたり転職した場合、勤続年数がリセットされることにより、退職所得控除の対象年数が分断されるケースがあります。また、前職・新職それぞれで退職金を受け取ると、合計額が大きくなり控除を超えて課税対象が増えることも。

さらに、再雇用契約によっては退職金が「退職所得」ではなく「給与所得」として扱われ、税制上の優遇が受けられなくなる可能性も。転職・再雇用を予定している方は事前に制度の確認をしておきましょう。

退職金2,000万円を有効活用するために

退職金2,000万円を一括で受け取った後は、使い方次第で将来の安心感が大きく変わります。老後資金や生活費の補填にあてるのはもちろん、運用や相続対策として考える人も少なくありません。しかし、計画的に使わなければ、あっという間に資金が目減りするリスクも。

この章では、退職金の代表的な使い道や運用方法、失敗しないための考え方を紹介し、将来に備えるための実践的なヒントをお伝えします。

退職金の使い道ランキングと注意点

退職金の主な使い道としては、このようなものが上位に挙げられます。

• ①老後の生活費
• ②住宅ローン返済
• ③旅行・趣味
• ④子どもや孫への支援
• ⑤資産運用

中でも「住宅ローンの一括返済」は安心感がある一方、手元資金が減ってしまうリスクもあるため注意が必要です。また、高額な買い物やレジャーに偏ると、老後の資金不足を招く恐れがあります。使途に優先順位をつけて、計画的に配分することが大切です。

老後資金としての運用方法とリスク分散

2,000万円という大きな退職金をそのまま預金だけで管理するのは非効率です。

インフレや長寿リスクに備えるためにも、資産の一部を投資信託や年金保険、個人年金などで運用するのが一般的です。ただし、すべてを高リスク資産に投じるのは避けましょう。

「預貯金・債券・株式」などに分散投資することで、リスクとリターンのバランスを取りやすくなります。自身の年齢やライフプランに応じた運用戦略が必要です。

ファイナンシャルプランナーに相談すべき理由

退職金の使い道や運用方法は人によって大きく異なります。資産寿命の延ばし方や、税制優遇制度の活用、相続対策など、専門知識が求められる場面も多くあります。

そこで活躍するのがファイナンシャルプランナー（FP）です。中立的な立場で資金計画を立ててくれるFPに相談することで、無駄な支出を避けつつ、将来に備えた安心設計が可能になります。

特に2,000万円という大金を扱う場合は、プロのアドバイスが心強い味方となります。

まとめ

退職金2,000万円は大きな資金である一方、税金の知識がなければ損をしてしまうこともあります。退職所得控除や1/2課税を正しく活用することで、数百万円単位の節税が可能になるケースも。

本記事では、一時金・年金形式・併用パターン別の税額試算をはじめ、確定申告が必要な場面やiDeCo・企業型DCの注意点、再雇用時の控除の扱いなども詳しく解説しました。さらに退職金の有効な使い道やリスク分散、FP相談の重要性についても紹介。納得のいく退職金活用に向け、ぜひ参考にしてください。