個人と法人で異なる?現金にかかる相続税の仕組みと節税対策に方法を人別に解説!

2025.05.09

個人と法人で異なる?現金にかかる相続税の仕組みと節税対策に方法を人別に解説!

投資基礎知識

現金の相続は相続税がかかりやすく、節税対策が難しい資産とされています。本記事では、現金の相続税評価の仕組みや計算方法、タンス預金や名義預金の注意点を解説。さらに、贈与制度や資産の組み替えによる節税対策10選、生前贈与のポイント、不動産との比較について幅広く紹介しています。相続時の税負担を抑えるために必要な基礎知識と具体策を網羅した実践的な内容です。

目次

目次

はじめに|現金は相続税がかかりやすい財産

現金や預金といった金融資産は、相続税評価において最も透明性が高く、税務署にとって把握しやすい資産です。土地や建物、株式といった他の財産は、評価額に特例や鑑定が加わることで実勢価格よりも低く見積もられることがありますが、現金は一切の割引がきかず、保有額=評価額としてストレートに課税対象となります。

例えば、相続発生時に1,000万円の現金を保有していれば、その全額が課税ベースとなるため、節税余地がほとんどありません。

本記事では、そうした現金資産に対してどのような対策を講じれば税負担を抑えられるのか、贈与制度や資産の組み換えなど多角的な視点から具体策をご紹介します。

現金・預金の評価は時価=額面

現金や銀行預金は、他のどの資産よりも評価が明確であるという特性を持ちます。相続税の評価では、相続開始時点における預金残高や手元現金の総額が、そのまま評価額となる「額面評価」が適用されます。

つまり、現金は金融資産の中でも最も純粋に価値が反映されるため、相続財産の中でも課税対象として優先的に扱われやすいのです。特に注意すべきは、相続人が引き出した現金やタンス預金の存在も、預金履歴や生活状況の調査を通じて容易に把握される点です。

相続財産としての現金を過小に申告すると、追徴課税のリスクが高まるため、正確な評価と納税が求められます。

他の財産と比べて節税しにくい理由とは?

現金は、相続時において非常に柔軟性が乏しい資産といえます。不動産であれば評価額を下げる特例や、利用状況に応じた控除措置が用意されていますし、株式などは評価方法によって変動があります。しかし現金の場合、評価は常に固定されており、節税における工夫の余地が極めて限られています。また、形が見えやすく記録にも残るため、税務調査で疑われやすく、安易な贈与や隠匿も通用しません。

さらに、資産全体に占める現金比率が高いと、他の相続人との分配が簡易である反面、税務上の軽減措置を講じにくくなるのもデメリットです。こうした背景から、現金を多く保有する方ほど、早めの対策と専門的な節税スキームの検討が重要になります。

現金を相続したときの相続税の計算方法

現金を相続した場合、課税対象となる金額の算出には明確なステップが存在します。特に現金は評価が明確なため、計算過程での誤差が生じにくい一方で、過少申告が許されない厳格な資産でもあります。

ここでは、まず「正味の遺産総額」を求め、その後「基礎控除額」を適用、さらに「相続税の総額と個別負担額」を算出するという基本的な流れを、わかりやすく解説します。

正味の遺産総額の出し方

まず最初に行うべきは、被相続人の全財産を洗い出し、負債や葬儀費用などを差し引いて「正味の遺産額」を導き出す作業です。現金や預貯金、株式、不動産といったプラスの資産だけでなく、借入金や未払いの医療費などマイナスの要素も加味する必要があります。この差し引き後の金額が、相続税の課税ベースとなります。

見落としやすいのが「名義預金」など形式上は他人名義でも実質的に被相続人の財産であるケースです。正確な財産の棚卸しが、スムーズな申告と納税の第一歩です。

基礎控除の計算方法と適用条件

相続税の課税対象となるのは、正味遺産総額が「基礎控除額」を超えた場合に限られます。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で導かれ、相続人の人数によって非課税の枠が変動します。

例えば、相続人が2人いれば、基礎控除額は4,200万円となり、それ以下の財産であれば課税されません。この基礎控除を正しく理解し、事前に資産を整理しておくことで、税負担の有無を早期に把握することが可能になります。

相続税の総額と各相続人の税額の算出

基礎控除を差し引いた後の課税遺産に対しては、法定相続分に応じて一度「みなし分配」を行い、相続税の総額を計算します。この総額は、国が定める累進税率に従って段階的に算出されます。その後、実際の相続分に応じて、各相続人の納税額が個別に割り当てられます。加えて、配偶者控除や未成年者控除など、個人の属性に応じた軽減制度も適用されるため、状況に応じたシミュレーションが重要です。

税額は「全体→個人」へと分配される構造を理解することが、無駄のない対策につながります。

現金相続でよくあるトラブルと注意点

現金は形が残らない財産ゆえに、相続時には多くの誤解やトラブルを引き起こしがちです。とくに「見えないお金」や「名義だけの資産」は、相続人同士の対立や税務署からの指摘につながるリスクが潜んでいます。

この章では、現金特有の落とし穴として注意すべき3つのポイントを紹介し、スムーズな相続を実現するための備えを解説します。

タンス預金は税務調査で発覚しやすい

タンス預金とは、自宅などに現金を保管している状態を指します。一見、相続財産として申告しなければバレないと思われがちですが、税務署は被相続人の生前の生活レベルや収入、通帳の出金履歴などから不自然な点を洗い出します。

「生活費としては不自然な出金」「遺品の中から高額の現金が見つかった」などの状況があると、税務調査の対象になる可能性は高くなります。隠したつもりのタンス預金が発覚すれば、加算税や延滞税といったペナルティが科されることも。

現金は記録が残らないからこそ、正しく把握し、正確に申告することが肝心です。

名義預金は相続財産とみなされる

名義預金とは、実際には被相続人が管理・運用していたにもかかわらず、通帳や口座名義が家族のものである預金を指します。

例えば、親が子ども名義の口座に資金を移していても、子が自由に使えず、贈与契約もなければ、それは「形式だけの移転」とみなされます。税務署は「実質的に誰の財産か」を重視するため、こうした預金は相続財産に加算される可能性が非常に高いです。

名義変更や贈与の意思が曖昧な場合は、後々トラブルや課税リスクを生むため、日常の資金管理の段階から記録を残し、契約書を交わすなどの対策が求められます。

生前贈与加算のルールと対策

相続開始前3年以内に行った生前贈与は、相続財産に加算される「生前贈与加算」の対象になります。

これは、駆け込み贈与による節税を防ぐための制度で、年間110万円の非課税枠を使った贈与でも、加算対象となる点に注意が必要です。特に、贈与契約書を作成していない、贈与の実態が曖昧である場合は、課税リスクが高まります。

対策としては、早い段階から継続的に贈与を行うこと、贈与契約書を毎年作成し、受贈者が実際に管理していることを証明できるようにすることが重要です。形だけの贈与では節税にはならない点を理解しましょう。

相続税を節税するための現金対策10選

現金や預金は評価額がそのまま相続税の課税対象となるため、他の資産に比べて節税対策が難しい特徴があります。相続時の税負担を抑えるには、早めの準備と制度の正しい活用が重要です。

本章では、贈与や資産の組み替え、保険の活用など、現金相続に有効な10の節税方法をメリット・注意点とともにわかりやすく解説します。

1. 暦年贈与(年間110万円)の活用

毎年110万円以下の贈与には贈与税がかからないという「暦年贈与制度」は、相続税対策として最も基本的かつ有効な方法です。長期的に計画的に贈与を行えば、将来の課税対象となる財産を着実に減らすことが可能です。

贈与契約書の作成や贈与記録の保存を徹底することで、後々の税務トラブルを防ぐ効果も期待できます。

2. 相続時精算課税制度の利用

相続時精算課税制度では、2,500万円までの贈与が非課税扱いとなり、将来的に相続時にまとめて税額を精算する仕組みです。特に、今後価値が上がる資産を早めに移転したい場合に有効とされています。

ただし、一度この制度を選ぶと暦年贈与が使えなくなるため、長期的な視点での制度選択が必要です。

3. 教育資金の一括贈与の特例

子や孫の教育にかかる費用を一括して贈与することで、最大1,500万円まで非課税となる特例です。大学や習い事などの幅広い教育費が対象であり、相続税対策と同時に将来世代の支援も実現できます。

信託口座の活用が前提となるため、制度の詳細を確認してから手続きしましょう。

4. 結婚・子育て資金の一括贈与の特例

20歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚や出産・育児にかかる資金を一括贈与することで、最大1,000万円まで非課税とする制度です。

ブライダル費用や不妊治療費、保育費用などが対象になり、若年層の生活支援と相続税対策を同時に実現できる手段として注目されています。

5. 住宅取得等資金の贈与の特例

直系の子や孫に対し、住宅購入・増改築資金を贈与する場合、一定額まで非課税となる制度です。非課税枠は住宅の性能や契約時期によって異なるため、タイミングを見極めた活用がカギとなります。

住宅購入の支援を通じて、現金資産を効率よく減らせる相続対策です。

6. 生活費・教育費としての贈与

生活費や教育費といった日常的な援助は、贈与税の対象外とされる場合があります。非課税にするためには、「必要な都度」「合理的な金額」で支出されることが条件です。

定期的なまとまった金額の贈与は課税対象となるリスクがあるため、支払目的と実態の一致が重要です。

7. 配偶者への居住用不動産の贈与特例

婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得資金を贈与する場合、2,000万円までの贈与が非課税となる制度です。この特例は一生に一度しか使えませんが、相続税対策と生活基盤の安定化の両面で有効な制度です。登記の名義変更も忘れずに行いましょう。

8. 生命保険の非課税枠を利用する

相続人が受け取る生命保険金には、「500万円×法定相続人」の非課税枠が適用されます。現金をそのまま相続するよりも、保険に転換することで課税額を抑えることが可能です。

契約者、被保険者、受取人の組み合わせによって課税関係が変わるため、契約前に見直しを行うと安心です。

9. 不動産への資産組み替えで評価額を圧縮

現金を不動産に組み替えることで、相続時の評価額を抑えられるケースがあります。特に賃貸用不動産であれば、「貸家建付地評価」や「借家権控除」などの特例が使えるため、節税効果が大きくなります。

維持管理や将来的な売却も視野に入れた運用計画が求められます。

10. 墓地や仏具など非課税資産への転換

墓地や仏壇・仏具などの「祭祀財産」は、相続税がかからない非課税資産とされています。

これらを生前に購入しておくことで、現金資産の圧縮につながり、相続税対策としても効果があります。家庭内での宗教的な意味合いも考慮しつつ、早めの準備を心がけると良いでしょう。

現金の生前贈与で気をつけたい3つのポイント

現金の生前贈与は相続税の節税手段として広く利用されていますが、正しく行わなければ思わぬ課税や否認のリスクを招きかねません。税務署は贈与の実態を厳しくチェックしており、「形式だけの贈与」は容赦なく課税対象にされます。特に贈与の証拠書類、不自然な贈与パターン、そして3年以内の贈与の取り扱いなどには注意が必要です。

この章では、確実に節税効果を得るための3つの重要ポイントをわかりやすく解説します。

贈与契約書を作成して証拠を残す

現金の贈与は、預金口座への振込や手渡しで簡単に行える反面、記録が残らないと「贈与の事実そのものがなかった」と判断される可能性があります。そこで必須となるのが「贈与契約書」の作成です。

贈与する側・される側の氏名、金額、贈与日、贈与目的を明記し、双方の署名捺印を行いましょう。これにより、贈与の意志と事実が明確になり、後の税務調査でも根拠資料として有効になります。口約束や通帳記録だけでは不十分なので、書面で証拠を残すことが確実な対策です。

定期贈与とみなされない工夫

毎年同じ金額を同じ時期に贈与していると、税務署から「定期贈与」と見なされ、一括贈与と判定されて課税される可能性があります。これを避けるには、贈与する金額やタイミングを変化させるなど、継続的な計画に“個別性”を持たせる工夫が必要です。

また、毎年都度ごとに贈与契約書を作成することで、「その年に独立した贈与である」ことを証明できます。形式的な贈与ではなく、贈与者と受贈者の意思が年ごとに確認された記録を残すことが、課税回避の鍵になります。

亡くなる3年以内の贈与は加算対象

相続税法では、被相続人が死亡する前3年以内に行った贈与については、相続財産に加算して課税するというルールがあります。これは、死亡直前の「駆け込み贈与」による課税逃れを防ぐための仕組みです。

暦年贈与を利用していても、この3年以内の贈与は例外なく相続財産に組み込まれます。したがって、節税目的で贈与を検討する場合は、早い段階から計画的に始めることが重要です。また、受贈者が誰であるかも関係するため、相続人以外への贈与も検討材料になります。

現金と不動産、どちらを相続すべきか?

相続財産にはさまざまな種類がありますが、特に「現金」と「不動産」は、それぞれに異なる特性とメリット・デメリットがあるため、どちらを優先的に引き継ぐかは慎重に検討すべきです。現金は流動性が高く柔軟に使える一方で、相続税評価が高く、節税には不向きです。一方の不動産は評価額を抑えられる可能性がある反面、分割しづらさや管理の負担が発生することも。

ここでは、現金と不動産の相続における特徴を比較し、自身のライフスタイルや家族構成に合った選択をするためのヒントをご紹介します。

現金のメリット・デメリット

現金を相続する最大の利点は、すぐに使えるという点にあります。葬儀費用や相続税の納付、急な医療費など、タイムリーな支出に即応できる点は、非常に実用的です。また、相続人同士での分割も明確に行えるため、遺産分割協議がスムーズに進みやすい傾向があります。

しかしその反面、相続税の評価額がそのまま課税対象になるため、節税効果はほとんど期待できません。また、被相続人の名義口座にある現金は、相続発生と同時に凍結され、手続き完了まで引き出せない点にも注意が必要です。

使いやすさと税負担の大きさ、両方を見極めておくことが重要です。

不動産の節税効果と分割トラブルの懸念

不動産は、相続税対策において評価額を抑えやすい資産とされています。土地には路線価、建物には固定資産評価額が用いられ、市場価格よりも低く評価される傾向が強いため、節税効果が見込めます。さらに、賃貸用不動産であれば借地権割合や貸家建付地の評価減が適用されることもあります。

しかし一方で、不動産は分割が難しく、複数の相続人で意見が割れる原因にもなりがちです。売却や共有名義化、代償分割などの方法をとっても感情的な対立に発展するケースも少なくありません。不動産を相続する際は、税務面と家族関係の両面を考慮したうえで、慎重な判断が求められます。

まとめ|現金の相続税対策は計画的に行うことが重要

現金は他の財産と異なり、評価額がそのまま相続税の課税対象となるため、納税負担が大きくなりやすい資産です。不動産のように評価額を抑える特例や控除が適用されにくいため、早い段階での対策が欠かせません。暦年贈与や相続時精算課税制度、生命保険の非課税枠の活用、不動産などへの資産組み替えなど、合法的な手段を取り入れることで、現金でも節税効果を期待できます。

さらに、タンス預金や名義預金に関する誤解や不適切な管理は、相続人同士のトラブルや税務調査の対象になるリスクも伴います。正しい知識を身につけ、証拠書類を整えておくことが、円滑な資産承継の鍵です。

将来の相続に備えるためには、制度の仕組みを理解し、税理士など専門家と相談しながら計画的に対策を講じることが重要です。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

Action Hub編集部

このライターの記事を見る

市場の最新動向、専門家の分析、独自のリサーチレポートなどを通して、価値ある情報をハイエンドな投資家に提供します。

Share この記事をシェアする !

Related Articles 関連記事

Top Articles 人気記事

Contact お問い合わせ

投資の相談や気になることがあれば、
Action合同会社までお気軽にお問い合わせください。

免責事項について

当ウェブサイトは、弊社の概要や業務内容、活動についての情報提供のみを目的として作成されたものです。特定の金融商品・サービスあるいは特定の取引・スキームに関する申し出や勧誘を意図したものではなく、また特定の金融商品・サービスあるいは特定の取引・スキームの提供をお約束するものでもありません。弊社は、当ウェブサイトに掲載する情報に関して、または当ウェブサイトを利用したことでトラブルや損失、損害が発生しても、なんら責任を負うものではありません。弊社は、当ウェブサイトの構成、利用条件、URLおよびコンテンツなどを、予告なしに変更または削除することがあります。また、当ウェブサイトの運営を中断または中止させていただくことがあります。弊社は当サイトポリシーを予告なしに変更することがあります。あらかじめご了承ください。