インサイダー取引とは?具体的な規制行為や対象、取引への対策についてわかりやすく解説

インサイダー取引とは?具体的な規制行為や対象、取引への対策についてわかりやすく解説

投資基礎知識

投資に興味を持っている、もしくはすでに投資している人の中には、次のように思われている方も多いのではないでしょうか。

「インサイダー取引って何?概要や具体的な規制行為について知りたい。」
「インサイダー取引の規制対象や罰則について知りたい。」
「インサイダー取引がバレる理由について知りたい。」

当記事では、このような疑問にお答えします。記事を最後まで読んでいただければ、上記の疑問が解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
それでは、解説していきます!

インサイダー取引とは

インサイダー取引とは、企業の内部情報に関わる立場の取引先や大株主、従業員、会社役員などが、その立場を利用して会社の財務や経営など重要な内部情報を入手し、情報が一般に公表される前に会社の株式などを取引することを指します。このような取引が行われると、一般投資家との間で公平性が損なわれるため、証券市場の健全性・公正性が失われる可能性があります。そのため、金融商品取引法により規制されており、違反した場合には、個人なら5年以下の懲役または500万円以下の罰金、あるいはその両方が科され、法人なら5億円以下の罰金が科されます。

さらに、得た利益は没収されるだけでなく、課徴金などの行政罰も課せられます。また、他人に損失を回避させたり、利益を得させたりする目的で、公表されていない重要な事実を教えたり、その銘柄での取引を推奨することも禁止されています。

インサイダー取引の具体的な規制行為

インサイダー取引の具体的な規制行為は主に以下の2つです。

他人の損失もしくは利益を回避するため、取引を勧めたり、伝達したりする

会社に関係する人が、他人の損失を回避するため、または利益を得るために会社の公表前の重要な情報を伝えたり、取引を推奨することは禁じられています。具体的には以下のケースが当てはまります。

  • 利益を得させる目的で、友人に自社の株式取得を会社が決定したことを教え、自社の株式を購入するよう勧めた
  • 公開買付が行われることを知人に教え、公開買付前に知人が株式を買い付けた
  • ある会社を子会社にする企業の株式を知人に買い付けるよう勧めた

事実が公表される前に重要な事実を知った人が有価証券の売買を行う

金融商品取引法では、重要な事実を知った会社の関係者や、その情報を教えられた人が、公表前に株式などの売買を行うことや、公開売付け・買付けを行うことを禁止しています。以下のような事例があり、例え利益が発生していない場合でも、公開されていない重要な事実を知り、株式を買い付けた時点でその取引はインサイダー取引と判断されます。

  • ある飲食店で、従業員が来店していた上場企業の社員が自社の合併話をしているのを聞き、事実が公表される前にその上場会社の株を買い付けた
  • 近況報告の際に家族に自社と取引先が提携する重要な事実を話し、A社の株式を家族が買い付けた
  • 数ヶ月前に退職した社員が在職中に今期の売上高が非常に上がることを知り、退職後にその会社の株式を購入した
  • 自社にとって大きな損失計上や利益増の話を同僚に教えてもらい、事実の公表前に持株会を利用して自社株を売却した

規制対象

インサイダー取引の規制対象は、以下の通りです。

会社関係者

  • 元会社関係者
  • 上場会社などの顧問先・取引先(税理士、公認会計士、弁護士、取引銀行など)
  • 上場会社などの帳簿閲覧権を持つ者
  • 上場会社の従業員や役員(派遣社員・パートも含む)

このように、会社関係者とは、上場会社に勤務している従業員や役員に限られません。また、退職後1年を経過していない元会社関係者もインサイダー取引の規制対象です。

情報受領者

会社関係者ではなくても、会社関係者から公表前の重要な事実を教えてもらった人も規制の対象です。例えば、上場会社に勤務している知人や家族から聞いた公表されていない重要な事実を利用してその会社の株式を取引した場合、インサイダー取引とみなされます。

インサイダー取引の規制違反の罰則

規制違反の罰則について詳しく解説します。

刑事罰

以下に該当する規制違反に関しては、刑事罰が科される場合がありますので、注意が必要です。

【取引規制に違反した売買などを自ら行った場合】
5年以下の懲役または500万円以下の罰金

【インサイダー情報を違法に教えた人が取引規制に違反する売買などを行った場合】
5年以下の懲役または500万円以下の罰金

【法人代表者や使用人、代理人およびその他従業者が上記の規定に該当する場合】
法人の場合は5億円以下の罰金

課徴金納付命令

これは金融庁から発せられる制裁のための課徴金納付命令です。命令対象は、取引規制に違反する売買などを行った場合に該当します。課徴される金額は以下の通りです。

  • 自己の計算で取引規制に違反する売買などを行った場合、回避した損失または獲得した利益全額
  • 他人の計算で取引規制に違反する売買などを行った場合、投資を運用する業者は運用で得られた報酬の3倍、その他の場合は獲得した対価に相当する金額
  • 情報を受け取った人が取引規制に違反する売買などを行った場合、重要情報の伝達が売買の媒介や代理業・取次ぎで行われた際は獲得した手数料の3倍
  • 有価証券を募集したり、売出したりする取扱業で行われた場合は獲得した手数料の3倍
  • 上記以外の場合は、情報を受け取った人が得た利得の2分の1の金額

インサイダー取引がバレる理由

インサイダー取引がバレる理由は主に以下の2つです。

内部の関係者による密告

万が一、自分が取引に関連していることを同僚に知られた場合、個人的な恨みや正義感から内部の関係者に密告されることがあります。これを内部告発といい、役員や同僚が関係する法令違反について監督庁や報道機関に通報する行為です。

証券取引等監視委員会の調査

証券取引等監視委員会は、1992年に投資者の市場に対する信頼を保つ目的で設立された機関で、公正な取引が行われるように常に監視しています。インサイダー取引が行われた場合には、その履歴を監視しているために発覚します。

また、証券取引等監視委員会は情報提供窓口を設けており、「投資者を保護する上で問題が生じると予測される情報」「粉飾決算の可能性がある情報」「市場で不正がある可能性が考えられる情報」などを広く受け付けています。

インサイダーに該当するかの目安

日本取引所が公開しているホームページでは、インサイダー取引を上場会社に関係する人がその地位や職務によって得た、投資に影響を与える公表前の会社情報を使用して、自社の株式などを取引する行為と定義しています。会社関係者は正社員や役員に限らず、アルバイトやパートも含まれます。また、会社や一定の議決権を持つ株主と契約を結んでいるコンサルタントや公認会計士なども対象です。

会社関係者だけでなく、会社に関係する人から情報を教えてもらい、違法に株式を売買した人も処罰対象です。したがって、完全に会社と関係ない人であっても、インサイダー取引と全く無関係ではありませんので注意が必要です。

インサイダー取引の規制違反になるかどうかを判断する際に重要なのは、重要な事実を認識していたかどうかです。重要な事実とされる範囲は広いため、取引が違反になるか疑わしい場合は、総務部などに確認するか、売買を控えることが望ましいでしょう。

インサイダー取引への対策

インサイダー取引への対策は以下の3つです。

関係者に重要性を理解させる

インサイダー取引は、上場会社におけるコンプライアンス上の重要な問題であることを関係者がしっかりと認識する必要があります。定期的な研修や勉強会といった社内教育を通じて、従業員や役員に取引が違法であることを十分に教育することが大切です。

また、取引が行われ組織に損害を与えた場合の罰則について誓約書を交わすなどの対策も、違反や不正の抑制に効果的です。個人に対しては、「社内ルールに従い情報を管理する」「重要な事実がすでに公表されているか事前に確認する」「重要な事実をむやみに口外しない」といった対応が必要です。

自分が意図しない場所で友人や家族などが取引するきっかけを作ってしまわないよう注意しましょう。

情報の適切な管理と適切な体制の整備に取り組む

外部に公表されていない機密情報が漏れて不正に利用されないように、厳重な情報の管理および体制の整備が重要です。例えば、会社に関係する人が株の取引を個別で行う場合、会社に申請および承認が必要な仕組みの構築や、その仕組みの運用を仕組み化することがあります。

また、公正な判断や監査ができる人を監査人に選び、内部監査を定期的に行うことも、組織的な不正を防止するために重要です。

適時情報を開示する

前述したように、重要な事実が公表されているかどうかが取引の適否を分ける重要なポイントです。そのため、投資の判断に大きな影響を与える情報は必要に応じて適時開示することが求められます。

しかし、不確実や未成熟な情報を開示して誤解を招く可能性がある場合は、適時開示しない方が良いこともあるため、慎重に検討する必要があります。

まとめ

インサイダー取引とは、企業の内部情報に関わる立場の取引先や大株主、従業員、会社役員などが、その立場を利用して会社の財務や経営など重要な内部情報を入手し、情報が一般に公表される前に会社の株式などを取引することを指します。具体的な規制行為には、他人の損失もしくは利益を回避するために取引を勧めたり、伝達したりすることや、事実が公表される前に重要な事実を知った人が有価証券の売買を行うことがあります。

インサイダー取引が発覚する理由は、内部の関係者による密告や証券取引等監視委員会の調査によるものです。インサイダー取引と判断された場合、重い罰則が科せられるため、十分注意が必要です。

したがって、投資に興味を持っている、もしくはこれから投資を始めようと考えている方は、インサイダー取引の概要や規制行為などについて十分理解した上で投資に取り組むことが重要です。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

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