相続税対策に一時払いは有効?一時払い生命保険(終身保険)の活用法を解説!

2025.05.20

相続税対策に一時払いは有効?一時払い生命保険(終身保険)の活用法を解説!

投資基礎知識

一時払いの終身保険は、相続税対策において有効な方法として注目されています。しかし、保険加入のタイミングや保険金の扱いには注意が必要です。本記事では、一時払い生命保険の仕組みやメリット、相続における活用法について具体的に解説します。

目次

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なぜ生命保険の「一時払い」が相続税対策になるのか?

一時払い生命保険がなぜ相続税の負担軽減に繋がるのか、その背景を見ていきましょう。

生命保険金は「みなし相続財産」

生命保険金は、法的に「みなし相続財産」として位置づけられています。

これは、被相続人の死亡を原因として支払われるものであり、相続によって取得した財産と同様の経済的効果を持つとみなされるためです。

相続税法では、被相続人が保険料を負担した生命保険契約に基づき、その死亡によって相続人等が受け取る保険金は、相続で取得したものとみなされ、相続税の対象となります。

例えば、一時払い終身保険を活用すると、一度に支払った保険料に基づき生命保険金が支払われます。

例えば、一時払い終身保険を活用すると、一括で支払った保険料をもとに生命保険金を受け取れます。

この一括払いの仕組みにより、契約時にまとまった死亡保険金を設定しやすくなります。

支払った保険料に応じて設定された保険金額が、被保険者の死亡時に指定された受取人へ支払われます。

この受け取る金額がみなし相続財産に該当し、一定の要件を満たせば非課税枠が適用されるため、結果として相続税の負担を大きく抑えられる可能性があります。

また、生命保険金は受取人に直接支払われるため、相続過程で揉める可能性を減らしたり、迅速に家族へ資金を渡したりできる点も魅力的です。

こうした特徴が、特にまとまった資産を保有する人にとって、生命保険を活用した相続税対策につながっています。

生命保険金の非課税枠を活用できる

生命保険は「みなし相続財産」であると同時に、非課税枠を利用できる特別な制度があります。

この非課税枠の金額は「500万円 × 法定相続人の人数」で決まり、法定相続人が多いほど非課税となる金額が増えます。

法定相続人とは、民法で定められた相続権を持つ人物です。配偶者は常に含まれ、血縁関係では子、親や祖父母などの直系尊属、兄弟姉妹などが順位に従って該当します。

非課税枠を計算する際の「法定相続人の人数」には、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとしてカウントします。

また、相続税法で定められた養子の数に関する制限(実子がいる場合は1名まで、実子がいない場合は2名まで)も考慮に入れます。

具体例として、法定相続人が3名の場合、非課税枠は1,500万円です。

もし受け取る死亡保険金の合計額が1,500万円以下であれば、その保険金には相続税は一切かかりません。

法定相続人が5名いれば非課税枠は2,500万円、10名いれば5,000万円となり、人数が多いほど、より多額の死亡保険金を税金がかからずに受け取ることが可能です。

この非課税範囲内であれば、たとえ生命保険金を受け取っても相続税の負担がなく、結果として家族に金銭的な負担をかけずに財産を引き継げます。

一時払い終身保険を活用し、まとまった金額を死亡保険金として設定することで、非課税枠を効果的に活用できます。

さらに、非課税枠を超えた金額であっても、生命保険金は相続財産として評価されるため、多額の資産を現金化することで相続税の納税資金を確保しやすくなるメリットもあります。

このように非課税枠を活用することで、家族に必要な資金を確保しつつ、税金への対応を計画的に進められます。

生命保険金にかかる非課税枠の仕組みと計算方法

生命保険金に適用される非課税枠の仕組みと計算方法について解説します。

非課税枠の計算式:500万円 × 法定相続人の数

生命保険金は「みなし相続財産」ですが、その全額が相続税の対象となるわけではありません。

相続税の節税を考える上で重要な点は、死亡保険金には非課税枠が設定されていることです。

この非課税枠は、「500万円 × 法定相続人の人数」という計算式で求められます。

ここで言う「法定相続人の人数」は、民法上の人数を基にしますが、相続税法の計算においては特例が設けられています。

具体的には、相続放棄をした人がいても、その放棄はなかったものとして人数を数えます。

また、養子がいる場合は、実子がいれば1名まで、実子がいなければ2名までを法定相続人の人数に含めるという上限があります。

これらのルールに基づいて正確な法定相続人の数を把握することが、非課税枠を正しく計算するために大切です。

たとえば、法定相続人が3人いる場合、非課税枠は500万円 × 3人=1,500万円です。

この非課税枠を活用することで、大きな相続税の節税効果が得られる可能性があります。

非課税枠が適用されるための条件

非課税枠の適用を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

まず、死亡保険金の受取人が法定相続人であることが必須条件の一つです。法定相続人には、配偶者、子、直系尊属(親、祖父母など)、兄弟姉妹などが含まれますが、誰が該当するかは被相続人との関係性や他の相続人の有無によって異なります。

例えば、配偶者は常に法定相続人ですが、子がいない場合は直系尊属が、子も直系尊属もいない場合は兄弟姉妹が法定相続人となります。

もし受取人が法定相続人以外の場合、この非課税枠は利用できません。

また、保険契約の細かな条件によっては、非課税枠の適用が制限される可能性もあるため、契約を結ぶ際には注意が必要です。

相続税対策として一時払い終身保険を利用する場合は、事前に契約内容を十分確認することが大切です。

非課税枠を超えた場合の税金

死亡保険金の合計額が非課税枠の上限を超過した場合、その超えた金額に対して相続税が課税されます。

例えば、法定相続人が2名で非課税枠が1,000万円の場合、受け取った保険金が1,500万円であれば、超過分の500万円が課税対象となります。

相続税には基礎控除も適用されますが、課税対象額が増えるほど、納める税額も増加する傾向にあります。

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、課税遺産総額がこの基礎控除額を超える場合に相続税がかかります。

相続税の税率は累進課税制度が採用されているため、課税される遺産総額が大きくなるにつれて適用される税率も高くなり、結果として納税負担が増大する可能性があります。

そのため、一時払い生命保険を契約する際には、自分の家族構成や相続財産の総額を把握し、必要に応じて専門家に相談することが大切です。

知っておくべき!契約形態による税金の種類

生命保険金にかかる税金の種類は、保険契約の「契約者」「被保険者」「受取人」という3つの関係によって決まります。

契約者=被保険者、受取人=相続人の場合(相続税)

このケースでは、保険料を支払った人物(契約者)と、保険の対象となる人物(被保険者)が同一であり、死亡保険金を受け取るのがその相続人です。

この場合、受領した保険金は「みなし相続財産」として取り扱われるため、相続税が課税されます。

ただし、死亡保険金には非課税枠が適用されるため、「500万円 × 法定相続人の数」以内の保険金は非課税です。

これにより、相続税対策として生命保険が有効に活用できる仕組みです。

契約者≠被保険者、受取人=契約者の場合(所得税・住民税)

このケースでは、保険料を支払った契約者と被保険者が異なる人物で、死亡保険金を受け取るのが契約者自身となります。この場合、相続税ではなく所得税と住民税の対象となります。

受け取った保険金は、保険商品の種類によりますが、多くの場合「一時所得」と見なされます。

死亡保険金が一時所得として扱われる際の税額計算は、「受け取った金額 – 支払った保険料などの経費 – 特別控除額(最大50万円)」で算出された金額の半分に、他の所得と合算して所得税率が適用されます。

この契約形態では、非課税枠の恩恵を受けられないため、相続税対策としてはあまり効果的ではありません。

契約者≠被保険者、受取人≠契約者の場合(贈与税)

保険料を契約者が支払い、被保険者が死亡した場合に、その保険金が契約者以外の第三者(例えば親族など)に支払われると、贈与税の対象となります。

この場合、保険金を受け取った人は、保険料を支払った契約者から無償で財産を受け取ったとみなされ、その受け取った保険金に対して贈与税が課税されます。

受取人にとって保険金は契約者からの贈与とみなされ、贈与税の高い税率が適用される可能性があります。

贈与税は、暦年課税を選択した場合、年間110万円の基礎控除額を超える部分に課税され、税率は10%から最大55%の累進税率が適用されます。

そのため、この契約形態は相続税対策には適していません。

なお、贈与税は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの期間に申告・納税が必要です。

一時払いにおける最適な契約形態は?

一時払い生命保険を相続税対策として活用する場合、「契約者=被保険者、受取人=相続人」という形態が最も効果的です。

この形態では非課税枠を最大限活用でき、受取人が相続人であれば保険金をスムーズに家族へ引き継げます。

自身の家族構成や個別の状況に応じた最適な契約形態については、税理士などの専門家に相談することを検討しましょう。

一時払い生命保険を相続税対策に使うメリット

一時払い生命保険を相続税対策に使うメリットは、以下の通りです。

まとまった資金を早期に非課税財産に転換できる

一時払い生命保険は、相続税対策に非常に有効です。

契約時にまとまった保険料を支払う仕組みのため、手元の資金を早期に生命保険として非課税枠内で活用できます。

相続財産の一部を死亡保険金という形で受取人に渡せるため、相続税負担を軽減する効果が期待できます。

たとえば、法定相続人が3人いる場合、死亡保険金の非課税枠は「500万円×3人=1,500万円」です。

この非課税枠を利用することで、預貯金などに比べて大幅な節税が可能です。

まとまった資金を効率的に非課税財産へ転換できる点は、大きな利点です。

相続発生時に比較的短期間で現金化しやすい

一時払い生命保険のもう一つのメリットは、相続発生時に死亡保険金として迅速に現金化できる点です。

保険金は通常、受取人が請求をすれば比較的早い段階で支払われるため、相続税の納税資金として利用するのにも適しています。

相続は、通常、被相続人の財産分割の問題や手続きで多くの時間がかかることがありますが、生命保険金であれば、他の資産の分配が完了する前であっても現金として受け取れます。

そのため相続人が納税資金に困るリスクが軽減されます。

なお、相続税は、原則として相続開始から10ヶ月以内に現金で一括納付する必要があります。

保険契約の手続きが一度で完了する

一時払い生命保険は、最初に一括で保険料を支払うことで契約が完了する仕組みです。

そのため、毎月の保険料の支払いなど、将来的な手間を省けます。

特に高齢者が相続税対策を考える場合、一度きりの手続きで済むのは大きな魅力です。

また、一時払いという特徴から、保険契約と同時に資産の一部を相続に備えた形に変えられます。

これにより、保険の加入後は資産管理の手間が軽減され、相続準備がシンプルになる点も利点です。

一時払い生命保険のデメリット

一時払い生命保険のデメリットについて解説していきます。

解約返戻金が払込保険料を下回る「元本割れ」のリスク

一時払い生命保険では、契約後の一定期間内に解約を行った場合、解約返戻金が払込保険料を下回る「元本割れ」のリスクがあります。

特に契約初期には、保険会社が運営コストを差し引くため、解約返戻金が低く設定されることが多いです。

契約から数年以内に解約した場合、解約返戻金が払込保険料の70%〜90%程度になることも珍しくありません。

相続税対策として一時払い終身保険を検討する際には、解約の可能性を考慮し、長期的な保険契約として捉えるようにしましょう。

インフレによる実質的な価値が下がるリスク

一時払い生命保険では、保険金や解約返戻金の額が契約時に決まるため、インフレが進行するとその実質的な価値が下がる可能性があります。

特に、長期間保険契約を続ける場合、インフレ率が高くなると資産の購買力が目減りし、保険金が必要とされる時点で想定していた価値を下回ることがあります。

相続税対策を目的に契約する場合、インフレリスクを見越して他の資産運用と組み合わせることが大切です。

保険会社の経営破綻リスク

保険会社が経営破綻した場合、一時払い生命保険の保険金や解約返戻金が予定通り支払われないリスクがあります。

日本では、生命保険契約者保護機構により一定額まで保証される仕組みがあり、破綻した保険会社の契約にかかる責任準備金(将来の保険金等の支払いに備え積み立てられているお金)の90%までを補償することを原則としています。

ただし、保険種類によっては補償率が異なる場合や、高予定利率契約などについては、予定利率が引き下げられるなどの措置が取られる場合もあります。

しかし、元本の全額が必ずしも保護されるわけではありません。

保険会社を選ぶ際には、経営の安定性や信頼性をよく確認することが大切です。

契約内容の変更や解約に制限がある場合がある

一時払い生命保険の契約では、保険料を一括で支払う性質上、契約内容の変更や中途解約に制限が設けられている場合があります。

特に、契約者や受取人の変更が制限されるケースもあり、柔軟な対応が難しいことがあります。

また、中途解約時の手続きに時間がかかったり、解約手数料が差し引かれる場合もあります。

契約時には、これらの条件や制約について事前に確認し、必要な変更ができるかどうかを見極めることが大切です。

一時払い生命保険による相続税対策が向いている人と向いていない人

一時払い生命保険による相続税対策が向いている人と向いていない人は、以下の通りです。

向いている人:まとまった預貯金がある、相続税負担が大きい、早期に納税資金を確保したいなど

一時払い生命保険は相続税対策として有効な手段であり、特に次のような条件に該当する人に向いています。

まず、まとまった預貯金がある方です。

一時払い終身保険では、契約時にまとまった保険料を支払う必要があります。

そのため、手元に十分な資金がないと加入が難しく、事前に資金準備が必要です。

次に、相続税負担が大きい見込みの方に適しています。

保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が適用されるため、大きな節税効果を期待できます。

この非課税枠を活用すれば、相続財産が増えても相続税の負担を軽減できます。

また、相続発生時に納税資金を早期に確保したい方にもおすすめです。

家や土地など現物資産が多い場合、現金化が難しいケースがよくありますが、保険金ならスムーズに現金として受け取れるため、納税や相続手続きの負担を軽減できます。

向いていない人:手元資金に余裕がない、生命保険以外の相続税対策をするなど

一時払い生命保険は、全ての人に適しているわけではありません。

例えば、手元資金に余裕がない方には向いていません。

一時払いは契約時にまとまった保険料を一括で支払う必要があり、資金が拘束されます。

そのため、手元の資金に余裕のない方には難しい選択肢です。

また、資金の流動性を重視したい方も注意が必要です。

一時払い終身保険では、一度支払った保険料は基本的に契約期間中は引き出せません。

解約で解約返戻金を受け取れる可能性はありますが、元本割れのリスクがあるため、流動性を優先したい方には不向きです。

さらに、生命保険以外にも有効な相続税対策が取れる方にもあまり適していない場合があります。

不動産や信託を活用した相続税対策など、より自分にふさわしい代替手段がある場合は、そちらを検討する方が有利な場合もあります。

一時払い生命保険は、相続税を節税する有効な方法ではあるものの、自身の経済状況や目的に合わせて判断することが大切です。

一時払い生命保険の加入を検討するタイミング

一時払い生命保険の加入を検討するタイミングは、いつなのでしょうか。

相続税対策を考え始めた時

相続税対策を考え始めたタイミングは、一時払い生命保険への加入を検討する良い時期です。

一時払い終身保険は、生命保険金が非課税枠の対象になるため、資産の一部を現金ではなく保険として管理することで相続税の節税が期待できます。

さらに、相続税の基礎控除を超える財産をお持ちの方であれば、早めの対策が大切です。

まとまった資金ができた時(退職金など)

退職金や不動産の売却益などでまとまった資金ができた時も、一時払い生命保険の加入を検討するタイミングです。

まとまった資金を一時払い終身保険の保険料に充てることで、資産を非課税枠内の生命保険金として効率よく管理できます。

また、一時払いという特性上、契約時に保険料をまとめて支払うため、手間を最小限に抑えながら相続税対策を進められます。

健康状態に不安がない時

一時払い生命保険に加入するには、契約時点での健康状態が一定の条件を満たす必要がある場合があります。

そのため、健康状態に問題がない時期に加入を検討することが大切です。

特に高齢の方が相続税対策として生命保険を活用する場合、早めの行動がその後のプランの実現性を高めるポイントです。

また、健康状態が良い時に手続きを済ませることで、より有利な保険契約が得られる可能性もあります。

まとめ

一時払い生命保険(終身保険)は、相続税対策として非常に有効な手段の一つです。

この保険を活用することで、相続税の節税効果を得られるだけでなく、納税資金の確保や家族への資産承継もスムーズに行えます。

また、死亡保険金には法定相続人の数に基づいた非課税限度額が適用されるため、生命保険を利用することで相続財産の税負担を軽減できる可能性があります。

ただし、一時払い生命保険に加入する際には、まとまった資金が必要である点や契約形態によって税金の種類が異なる点など、注意すべき事項もあります。

また、保険の契約内容や特徴を正しく理解し、自身の資産状況や相続の見込みに合った形で活用することが大切です。

相続税対策を検討している方や、家族に確実に資産を残したいという方にとって、一時払い生命保険は有力な選択肢となり得ます。

契約を検討する際には、専門家への相談を通じて最適なプランを見つけることをおすすめします。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

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