【相続税対策】不動産の法人化は有効?メリット・デメリット・仕組みを徹底解説!

2025.05.23

【相続税対策】不動産の法人化は有効?メリット・デメリット・仕組みを徹底解説!

投資基礎知識

相続税の負担を少しでも軽減したいと考える方にとって、不動産の「法人化」は有効な対策のひとつです。個人で保有している不動産を法人名義にすることで、どのようなメリットやデメリットがあるのか、事前に正確に把握することが重要です。今回は、相続における不動産の法人化について、仕組みや相続税対策としての活用方法を詳しく解説します。

目次

目次

「不動産の法人化」とは?基本的な仕組み

「不動産の法人化」とはどんな仕組みなのでしょうか。

個人所有の不動産を法人所有に切り替える

「不動産の法人化」とは、個人が所有している不動産を法人名義に切り替える仕組みです。

不動産を個人のまま所有していると相続財産として相続税の課税対象となりますが、法人化することで相続税対策として有効な手段となる場合があります。

不動産を法人で所有すれば、賃貸収入が法人の利益として計上され、所得税や住民税の節税効果も期待できます。

また、法人化を通じて財産を法人と個人に分散できるため、財産の分割や運用がより柔軟になります。

資産管理会社の設立

不動産の法人化を進めるには、資産管理会社の設立が主な方法の一つです。

この資産管理会社は、不動産の保有、管理、運営を主な業務とする法人で、一般的には個人が所有する土地や建物を法人へ移転したり、法人が所有する不動産を運用する形で機能します。

資産管理会社を設立することで、家賃収入や不動産運営に関する収入が法人の収益として処理されるため、相続財産としての不動産の評価額を相対的に抑えられる場合があります。

特に、家族がその法人の株主になれば、相続時に株式や持分の形で財産を分割しやすくなる点も大きなメリットです。

合同会社と株式会社の違い

不動産法人化を進める際、法人の形態として「合同会社」または「株式会社」を選ぶのが一般的です。

この二つにはそれぞれ特徴があります。

合同会社は設立や運営にかかるコストが低く、株主総会などの決算報告も不要なため、少人数で不動産を管理したい場合に適しています。

一方、株式会社は株式発行が可能で、事業規模拡大や信頼性の向上が見込めるため、大規模な不動産運営や将来的な株主の増加を見越したケースで有利です。

また、税務上や相続税対策の観点では、それぞれの法人形態が持つ特徴を考慮した上で選択することが重要です。

専門家に相談しながら、自身の財産規模や収入状況に合った形態を選ぶようにしましょう。

不動産法人化が相続税対策に効果的な理由

不動産法人化が相続税対策に効果的な理由について解説していきます。

相続財産の評価減効果:出資持分・株式の評価減

不動産法人化をすれば、相続財産の評価額を減らす効果が期待できます。

法人化により、不動産の所有権が個人ではなく法人へ移るため、相続時には法人の「出資持分」または「株式」が評価対象となります。

これらは市場価値や取引条件などを考慮した評価額となるため、不動産を直接相続する場合に比べて評価額が低くなりやすい傾向があります。

ただし、法人の純資産価額が評価に影響するため、必ずしも評価減に繋がるとは限りません。

この評価減効果によって、相続税の総額を抑えられます。

また、土地や建物の相続に伴う遺産分割トラブルを防ぐ点でも効果的です。

計画的な生前贈与の活用:株(出資持分)の少額贈与

不動産を法人化することで、計画的な生前贈与も行いやすくなります。

個人所有の不動産を贈与する際には、通常、固定資産税評価額などを基準とした贈与税が課されますが、不動産法人化をすれば出資持分や株式を少額ずつ贈与する方法が可能です。

例えば、毎年の非課税枠内で少しずつ株式を贈与すれば、相続税を軽減しながら生前に相続対策を進められます。

特に、相続人が複数いる場合、円滑な財産移転にもつながります。

納税資金対策:法人からの役員報酬や配当

相続税の納税資金を確保することは、多くの相続人にとって大きな課題です。

不動産を法人化しておくと、法人の利益を通じて役員報酬や配当金として資金を相続人に分配できます。

役員報酬は法人の経費として計上されるため、法人税の負担を軽減しながら、個人側に適切に収入を移転できます。

このようにして得た資金は、相続税の納税資金に充てられるため、相続における経済的負担の軽減が期待できます。

相続税の繰り延べ効果と承継の円滑化

不動産法人化は、相続税の課税タイミングをコントロールすることにも役立ちます。

これにより、相続税の支払いを一定の期間繰り延べることが可能です。

また、不動産を法人名義にすることで、遺産分割時の複雑な手続きやトラブルを回避できます。

法人の株式や持分を相続対象にすることで、所有権が明確化され、家族間での争いを防ぐことにつながります。

これにより、相続後の事業運営や不動産管理がスムーズに進む効果が期待できます。

相続税対策以外の不動産法人化がもたらす税務上のメリット

相続税対策以外の不動産法人化がもたらす税務上のメリットは、以下の通りです。

所得税・住民税の節税

不動産収入を個人所有から法人所有に切り替えることで、所得税と住民税を節税する効果が期待できます。

個人の不動産収入には累進課税が適用され、所得が高くなるほど税率が上がります。

一方、法人税は個人の所得税に比べて税率構造が異なり、所得規模によっては低い税率が適用される場合があるため、法人化することで税率を抑えられる可能性があります。

また、法人から役員報酬を受け取る形式にすれば、個人の所得を分散させることでさらなる所得税・住民税の軽減が可能です。

消費税の節税

一定の条件を満たす法人設立方法を活用することで、消費税の節税が可能です。

たとえば、資本金を1,000万円未満で法人を設立した場合、設立から最大2年間は消費税の納税義務が免除されるケースがあります。

また、不動産賃貸業を法人化することで、課税売上高に応じた消費税還付が受けられる可能性もあります。

ただし、適用条件や手続きには慎重な判断が必要なため、専門家に相談することをおすすめします。

損益通算と繰越欠損金の活用

法人化することで、損失の活用が柔軟に行える点も大きなメリットです。

不動産賃貸業における修繕費や減価償却費が発生した場合、これらを法人の他の事業収入と損益通算できます。

また、法人には「欠損金の繰越控除」という制度があり、赤字が発生した際には最大10年間にわたりその赤字を将来の利益と相殺できます。

これにより、長期的に見て税負担を軽減する効果が期待できます。

給与所得控除と役員退職金の活用

不動産法人化をすれば、法人からの役員報酬や退職金を受け取る形式に変更でき、給与所得控除や役員退職金の優遇税制を活用できます。

役員報酬は給与所得扱いとなり、給与所得控除が適用されるため、所得税の負担を軽減できます。

また、生涯所得の一部を退職金として受け取ることで、分離課税が適用され、低い税率で済む場合が多いです。

特に役員退職金は、勤続年数によって控除額が増えるため、長期的な相続税対策や資産分散にも寄与します。

不動産法人化のデメリット

不動産法人化のデメリットについて解説していきます。

法人設立・維持コストの発生(登録免許税、法人住民税均等割、税理士報酬、社会保険料など)

不動産の法人化をする場合、法人設立や運営にはさまざまなコストが発生します。

まず、法人設立時には会社設立のための登録免許税や定款作成費用が必要です。また、設立後も毎年法人住民税均等割を支払わなければなりません。

さらに、会計や税務処理を行うために税理士を依頼した場合の報酬や、役員報酬の支払いに伴う社会保険料など、固定的な費用が継続的に発生する点がデメリットとして挙げられます。

これらのコストは法人化の範囲や事業規模により変化しますが、特に収入規模が小さい場合には、コスト負担が相対的に重くなるため慎重な検討が必要です。

不動産移転時の税金(登録免許税、不動産取得税、消費税)

個人所有の不動産を法人名義に移す際には、さまざまな税金が発生する可能性があります。

たとえば、不動産の所有権を移転する際には登録免許税が必要です。

また、不動産取得税も課税され、不動産が課税対象となる取引の場合は消費税も負担することになります。

これらの税金は特に高額不動産を法人化する際に大きな負担となることがあるため、事前にこれらのコストを専門家とシミュレーションし、資金計画を立てることが非常に重要です。

金融機関からの融資条件の変化(個人から法人への切り替え)

不動産の法人化をすれば、金融機関からの融資条件が変わる場合があります。

個人であれば住宅ローンや不動産投資ローンなどの融資を受けやすい場合がありますが、法人として借り入れる際には、個人の信用力に加えて法人の事業実績や財務状況も審査対象となるため、より審査が厳しくなることがあります。

また、法人の事業実績が短い場合や収益が不安定な場合、金利が高くなる可能性もあります。

さらに、個人所有の不動産に関連して契約済みの融資は、法人化後に見直しが必要な場合があり、これによって予期せぬ負担が発生する可能性があります。

税制改正のリスク

不動産法人化による相続税対策や節税を前提としていても、将来的な税制改正のリスクは避けられません。

たとえば、法人の相続税評価や法人化による税務上の優遇措置が改正されることで、現在の制度上で得られるメリットが減少する可能性があります。

また、法人所得税や配当課税が増える改正が行われた場合、法人化による収益性が下がることも考えられます。

このようなリスクを考慮したうえで、不動産法人化の可否を判断する必要があります。

不動産法人化の手続きの流れ

不動産法人化の手続きの流れについて解説していきます。

事前シミュレーションと専門家への相談

不動産の法人化を検討する際は、まず事前シミュレーションを行うことが重要です。

不動産を法人に移転する際の費用や税金、節税効果がどの程度期待できるかを具体的に把握する必要があります。

また、相続税対策を目的とする場合には、家族構成や将来の相続財産の見込みも考慮しなければなりません。

このような複雑な計画の実現には、税理士や司法書士、弁護士などの専門家に相談することが効果的です。

専門家のアドバイスを受ければ、手続き上のミスを防ぐだけでなく、法人化のメリットを最大限にできます。

法人設立手続き(会社名決定、定款作成、登記申請)

不動産法人化を進める際には、まず法人を設立する必要があります。

具体的には、会社名の決定、事業目的や組織形態を定めた定款の作成、そして法務局での登記申請を行います。

特に定款には、不動産賃貸業や管理業務など、具体的な事業内容を明記することが望ましいです。

合同会社と株式会社のいずれを選ぶかも重要なポイントであり、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて判断すると良いでしょう。

法人設立には登録免許税といった費用がかかるので、資金計画もしっかりと立てることが求められます。

不動産の移転手続き(売買、現物出資、賃貸借契約の承継)

法人設立後、不動産を法人に移転する手続きが必要です。

この際、売買や現物出資といった方法が一般的に採用されます。

売買の場合、適正な価格で取引を行い、個人に譲渡所得があれば譲渡所得税が課税される可能性があります。

一方、現物出資は法人の対価として株式を受け取る方法ですが、ここでも登録免許税や不動産取得税が発生します。

また、既存の賃貸借契約を法人に承継させる手続きも重要で、これにより家賃収入が法人の収益として計上されるようになります。

不動産移転時には税金や手続きが絡むため、慎重に進める必要があります。

資金計画と資金調達

不動産法人化を進める上では、十分な資金計画を立てることが欠かせません。

不動産の移転に伴う諸費用や法人運営に必要な運転資金を確保するため、金融機関からの融資を検討するケースもあります。

ただし、法人化することで個人所有の時と比べて融資条件が変わる可能性があるので、事前に金融機関と相談しておくことが重要です。

また、法人設立後の運営資金が不足することのないよう、適切な資金調達手段を選択しましょう。

賃貸管理・税務申告など法人運営の開始

法人設立および不動産の移転手続きが完了した後は、賃貸管理業務や税務申告など法人運営を本格的に開始します。

賃貸借契約を法人名義で結び直し、家賃収入を法人の売上として計上します。

また、法人としての決算や税務申告が必要になるため、税理士に依頼するのが一般的です。同時に、社会保険手続きや役員報酬の設定など、法人運営に伴う様々な業務も発生します。

これらの業務をスムーズにこなすためには、事前の準備と専門家のサポートが欠かせません。

どんな不動産・オーナーが法人化に向いているのか?

どんな不動産・オーナーが法人化に向いているのでしょうか。

高額な相続財産(特に不動産)を所有している方

高額な相続財産を所有している方は、不動産の法人化を検討すべきです。

特に土地や建物といった不動産は、相続時にその評価額が高額となりやすく、結果として相続税の負担が非常に重くなることがあります。

不動産を法人所有とすることで、個人が直接所有するよりも財産評価額を割り引くことができ、相続税の負担軽減が期待できます。

また、法人化することで不動産の管理や運営の透明性が高まり、遺産分割のトラブル防止にもつながります。

複数の賃貸不動産を所有し、年間家賃収入が安定している方

複数の賃貸不動産を所有している場合、法人化による管理の効率化や税務面での恩恵を受けられる可能性があります。

賃貸不動産による年間家賃収入が安定しているオーナーは、法人化することで所得を法人税率で課税される範囲に抑えることができ、結果として所得税や住民税の負担軽減につながる可能性があります。

また、法人が不動産の管理運営を担うことで、経費処理がスムーズになり、適切な税務対策を行いやすくなります。

不動産管理を法人として組織化したい方

不動産管理を効率的かつ組織的に運営したいと考えるオーナーにとって、法人化は有効な選択肢です。

不動産管理の法人化により、管理・運営の責任を明確化し、業務体制を強化できます。

例えば、管理会社として法人を設立し、その法人が個人や他の法人からの契約を引き受ければ、賃貸経営に関する運営を一本化できます。

また、生前贈与として法人の株式(出資持分)を少額ずつ譲渡することで、相続税の対策にも役立てられます。

まとめ

不動産を法人化することは、相続税対策として非常に効果的な手法です。

不動産の法人化により、相続財産の評価減や計画的な生前贈与を実現できるだけでなく、法人の仕組みを活用することで納税資金対策や相続税の円滑な承継も図れます。

また、相続税以外にも所得税や住民税、さらには消費税の節税効果を得られる場合もあります。

ただし、不動産法人化には法人設立や運営のコスト、税制改正のリスク、さらには不動産移転時に発生する税金といったデメリットも存在します。

そのため、事前の詳細なシミュレーションや専門家への相談を通じて、最適な方法とタイミングで進めることが重要です。

特に、相続財産として高額な土地や建物を所有している方や複数の不動産を管理している方にとって、法人化は有効な相続税対策となり得ます。

適切に土地や財産の所有形態を見極めながら、不動産の法人化を長期的な視点で計画することで、財産をスムーズに次世代へと引き継ぐことができます。

不動産の法人化を通じた相続税対策は、法改正や個別の状況に左右される部分も多いため、税理士や弁護士といった専門家のサポートを活用しながら、準備を進めていきましょう。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

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