投資基礎知識
投資に興味を持っている方や、すでに投資をしている方の中には、次のような疑問を持たれている方も多いのではないでしょうか?
「シャープレシオって何?概要や計算方法について知りたい。」
「シャープレシオを使うメリットについて知りたい。」
「シャープレシオを投資に活かす方法や注意点について知りたい。」
本記事では、これらの悩みを解決するために、シャープレシオについて詳しく解説します。記事を最後までお読みいただければ、上記の疑問を解決できるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。それでは解説していきます!
目次
目次
シャープレシオとは
シャープレシオとは、投資のパフォーマンスを評価する指標であり、特定の期間における資産のリターン(平均収益率)と、そのリターンの変動幅(リスク)を比較する目的で使用されます。投資信託の商品や投資配分をどのように組み合わせるか、またどの銘柄にどの程度投資するかなど、分散投資におけるリスクとリターンのバランスを評価するために用いられます。
一般的に、リターンを大きくしようとするとリスクも増大しますが、異なる値動きをする資産や株式を組み合わせることで、リスクを抑えつつリターンを追求することも可能です。
例えば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の公式ホームページには、「アイスクリーム会社とおでん会社の株式」の例が掲載されています。この例を参照すると、リスク分散の重要性が理解しやすいでしょう。
引用:GPIF「分散投資の意義③卵を一つのかごに盛るな」
通常、アイスクリームは冬場よりも夏場に売れます。一方で、おでんは夏場よりも冬場に売れます。このように、逆の値動きをする株式を組み合わせることで、全体のリスクを低減し、安定したリターンを得ることが可能です。
なお、投資の「リスク」は「危険性」ではなく、「変動幅」や「バラツキ」を指し、「標準偏差」と呼ばれる指標で表されます。実績値が平均収益率に対して大きく変動する場合はリスクが高いとされ、逆に変動が小さい場合はリスクが低いとされます。
シャープレシオの計算方法
シャープレシオは、安全資産利子率(リスクがなく利益が発生する資産の利子率、例えば国債)からポートフォリオの収益率を引き、その数値をリスク(標準偏差)で割ることで求められます。
例えば、100万円分の投資信託Aを保有しており、1年後に105万円になった場合、年間リターンは5%です。この場合、ポートフォリオの収益率は5%となります。
標準偏差は数値のバラつきを示す指標であり、バラつきが大きいほどリスクも高いとされます。
シャープレシオは、投資効率が良いほど高くなります。分母に使われる標準偏差が小さいほど、シャープレシオの値は上昇します。
シャープレシオの値が1以上の場合は、リスクとリターンがバランスしているとされ、投資の対象として検討に値するでしょう。値が2以上であれば、非常に優れた投資信託と判断できます。
また、シャープレシオを評価する際は、同じカテゴリーの他のファンドと比較することも重要です。例えば、あるファンドのシャープレシオが1.2であっても、カテゴリー全体の平均が1.5であれば、そのファンドは平均より劣っていると判断されます。
そのため、シャープレシオを参照する際は、同カテゴリー内でより優れた、できれば1以上の数値のファンドを選ぶようにしましょう。
シャープレシオを使うメリット
長期間にわたる資産運用では、資産を一種類に集中させるのではなく、債券や国内外の株式など、さまざまな資産を組み合わせることが重要です。シャープレシオを使用することで、リスクに対して大きなリターンが見込める商品を簡単に比較することができます。
例えば、為替ヘッジがある場合とない場合のファンドの運用成績を比較することができます。QUICKが提供する投信データによると、過去10年間の累積リターンとリスクを基に算出した平均値は以下の通りです。
10年の年率平均リターン | 10年の年率標準偏差 | 10年の年率シャープレシオ | |
為替ヘッジ(有り) | 11.22 | 16.06 | 0.70 |
為替ヘッジ(無し) | 7.62 | 13.44 | 0.56 |
この表からもわかるように、為替ヘッジ無しの場合、標準偏差が大きいにもかかわらず、平均リターンもそれなりに大きいため、リスクに対して大きなリターンを見込める可能性があります。
同じように、日本以外の先進国におけるインデックス型ファンドの過去10年間の累積リターンとリスクを基に算出した平均値も示されます。
10年の年率平均リターン | 10年の年率標準偏差 | 10年の年率シャープレシオ | |
為替ヘッジ(有り) | 11.22 | 16.06 | 0.70 |
為替ヘッジ(無し) | 13.57 | 16.69 | 0.81 |
この結果は、過去のデータに基づいているため、必ずしも未来の運用成績を保証するものではありませんが、資産配分を検討する際の参考にはなります。
シャープレシオを投資に活かす方法
シャープレシオは、投資ポートフォリオを最適化するための有効な指標です。シャープレシオが高いポートフォリオは、リスクとリターンのバランスが最適であると判断されます。
投資家は、シャープレシオを使って、最小限のリスクで最大のリターンを得るために、どの資産を選ぶべきかを判断できます。例えば、以下のような場面でシャープレシオを活用することができます。
- 過去の運用実績を基に、今後の運用成績を予測する
- 投資信託を複数組み合わせたポートフォリオを構築する際、それぞれのシャープレシオを比較して全体のリスクを評価する
- 同カテゴリーの投資信託と比較し、リスクを抑えつつリターンが見込めるファンドを選択する
ただし、シャープレシオを使用する際には、いくつかの注意点があります。
シャープレシオ使用時の注意点
シャープレシオを使用する際の注意点は、以下の4つです。
カテゴリーが同じファンドで比べる
シャープレシオを比較する際は、同じカテゴリー内で比較してください。異なるカテゴリーのファンド同士を比較しても、それは有効な比較とは言えません。
例えば、リスクが高い株式と、リスクが低い債券を比較しても、投資目的が異なるため、判断材料としては適していません。そのため、株式は株式同士、債券は債券同士で比較することが重要です。
比べる期間を統一する
比較する期間が異なると、同じ商品でも値動きが異なってきます。シャープレシオは過去のデータに基づいて計算されるため、例えばリーマン・ショックのような金融危機を含めるかどうかで、リスクとリターンが大きく変わります。
運用成績を正確に比較するためには、同じ期間で比較することが大切です。シャープレシオを確認する際は、3年以上の期間で確認するようにしてください。
短期間(直近1年など)で見ると、シャープレシオが一時的に高くなる場合があります。例えば、2020年のコロナショック以降、株価が急上昇し、短期間でのパフォーマンスが良く見えることがあります。このような場合を避けるためにも、長期間のデータで比較することが重要です。
マイナス成績の場合、大きいリスクの方がシャープレシオが大きくなる
リターンが大きい場合、シャープレシオの値も高くなり、リスクが大きい場合はシャープレシオの値は低くなります。しかし、運用成績がマイナスの場合、大きなリスクを取っているほどシャープレシオの値が大きくなる点に注意が必要です。
例えば、リスクが5%のAと10%のBがあり、リターンが-10%、安全資産利子率が0.1%の場合、Aのシャープレシオは-2.02、Bは-1.01となります。このように、同じリターンでも、高いリスクのBの方がシャープレシオの値が大きくなります。
マイナスのリターンの場合は、リスクが大きいほどシャープレシオの値が大きくなることを理解しておく必要があります。
未来は予測できない
シャープレシオで求められる値は、過去の一定期間におけるリターンとリスクを示したものです。過去の数値がどれだけ良くても、必ずしも未来の運用成績が良いとは限らないことを理解しておく必要があります。
まとめ
シャープレシオとは、特定の期間における資産のリターンとリスクのバランスを比較するために使用される指標です。リスクに対してどれだけ大きなリターンが見込めるかを評価するために、シャープレシオを活用することができます。
シャープレシオを使用する際には、同じカテゴリーのファンドで比較すること、比較期間を統一すること、マイナス成績の場合に注意することなどが重要です。
投資に興味を持っている方や、これから挑戦しようと考えている方は、シャープレシオの概要やメリット、使用時の注意点について十分に理解した上で検討することが大切です。
Share この記事をシェアする !