富裕層のための相続税対策!1億円以上の資産を相続で節税する方法とは?

2025.05.20

富裕層のための相続税対策!1億円以上の資産を相続で節税する方法とは?

投資基礎知識

資産が1億円を超える富裕層にとって、相続税の対策は避けて通れません。不動産や金融資産をどう分け、どのように評価するかによって、納税額が大きく変わります。相続時に慌てないためにも、早めの準備が欠かせません。本記事では、富裕層向けに相続税の仕組みから、上手な資産の分配、不動産活用まで、具体的な節税対策を詳しく解説します。

なぜ富裕層は相続税対策が必要なのか?

富裕層にとって、相続税対策は欠かせない重要なテーマです。

日本の相続税制度は累進課税を採用しており、資産規模が大きいほど税率が高くなる仕組みです。

富裕層が相続税負担を最小限に抑えるためには、適切な対策を講じる必要があります。

また、相続は資産を次の世代へ円滑に引き継ぐための大切なプロセスですが、相続税に適切に対処しないと、せっかく築き上げた資産が大幅に目減りしてしまうリスクがあります。

富裕層にかかる相続税の最高税率

日本における相続税の最高税率は、資産規模の大きな富裕層にとって特に重要なポイントです。

相続税の税率は、課税遺産総額に応じて段階的に定められており、課税遺産総額が大きくなるほど税率が上昇する累進課税制度を採用しています。

現在の相続税率では、課税遺産総額が6億円を超える部分に対して、最高55%という高い税率が適用されます。

これは、他の税率区分と比較しても非常に高く、富裕層の相続税負担を重くする大きな要因です。

例えば、課税遺産総額が6億円ちょうどの場合と、6億円を少しでも超えた場合では、税額に大きな差が生じます。

この税率は1億円以下の資産に対する税率(最高税率30%)と比較してもかなり高く、資産規模が大きくなるほど税負担も急激に増加します。

例えば、課税遺産総額が1億円以下であれば税率は最大30%ですが、これが1億円を超えると以下のようになります。

  • 1億円超2億円以下:40%
  • 2億円超3億円以下:45%
  • 3億円超6億円以下:50%
  • 6億円以上

課税遺産総額が6億円を超えると最大で55%と税率が大きく跳ね上がります。

このように、資産が増えれば増えるほど、単純な比例関係ではなく、税率そのものが上昇するため、税負担は文字通り雪だるま式に増加していきます。

また、基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されますが、これは資産規模が数百億円、あるいはそれ以上といった富裕層にとって、遺産総額全体から見ればごく一部に過ぎません。

控除額は限られているため、十分な対策を行わなければ、多額の納税を余儀なくされる可能性があります。

特に、長年にわたり事業を成功させたり、不動産投資などで多額の資産を築き上げたりした富裕層の場合、相続税の課税対象となる財産が基礎控除額を大幅に超えることが一般的であり、最高税率が適用される可能性が高いです。

相続税対策を怠った場合のリスク

適切な相続税対策を怠ると、富裕層が抱えるリスクは非常に大きなものとなります。

これは単に税負担が増えるだけでなく、築き上げた資産の維持や、家族間の関係性にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

リスクを事前に把握し、それに対する備えをしておくことが、富裕層の相続税対策においては非常に重要です。

まず、相続税の負担が非常に重くなり、遺産の多くを税金として支払わなければならない状況に陥ります。

課税遺産総額が多額になれば、最高税率55%が適用される部分も増え、結果として相続財産の半分以上が税金として徴収されることも珍しくありません。

例えば、課税遺産総額が10億円の場合、単純計算でも数億円規模の相続税が発生します。

このような多額の税負担は、相続人の経済状況に大きな打撃を与え、遺された家族の生活を圧迫する可能性もあります。

特に、相続税は原則として現金一括納付が求められるため、相続財産に占める現金の割合が低い場合、納税資金を捻出するために不動産や株式などの換金性の低い資産を売却する必要が生じます。

また、税務調査の対象となる可能性があり、名義預金や名義株といった、形式的な不正が疑われた場合には、ペナルティも課せられるリスクがあります。

特に、申告内容に不備や不自然な点が見られる場合、税務署は詳細な調査を行います。

その際に、実態と異なる名義で管理されていた預金や株式(名義預金、名義株)が発見されると、それが相続財産として認定されるだけでなく、意図的な隠蔽と見なされ、重加算税といった非常に重いペナルティが課される可能性があります。

富裕層向けの相続税対策

富裕層向けの相続税対策は、以下の通りです。

生前贈与の活用:暦年贈与・相続時精算課税制度・各種特例

富裕層の相続税対策の基本となるのが「生前贈与」です。

特に、親子間や祖父母と孫の間で年間110万円までの贈与は非課税となる「暦年贈与」は、資産を分散して相続税負担を軽減する効果的な方法です。

この年間110万円という非課税枠は、贈与を受ける人(受贈者)ごとに毎年利用できます。

例えば、親が3人の子どもにそれぞれ年間110万円ずつ贈与すれば、年間合計330万円を非課税で移転できます。

これを長期間(例えば20年間)続けることで、合計6,600万円もの財産を非課税で次世代に移転できます。

この方法は、比較的少額から始めることができ、計画的に行うことで大きな節税効果を生み出す可能性があります。

ただし、毎年同額を同じ時期に贈与すると「定期贈与」とみなされ、一括で贈与税が課税されるリスクがあるため、毎年新たに贈与契約書を作成したり、贈与の時期や金額を多少変動させたりするなどの工夫が必要です。

また、税制改正により「相続開始前3年以内」が「相続開始前7年以内(改正後の贈与については、施行後段階的に加算対象期間が延長)」に行われた贈与が相続財産に加算される(持ち戻される)仕組みが導入されたため、より早期からの贈与開始が重要になっています。

また、「相続時精算課税制度」を利用することで、生前に大きな金額を贈与しても2,500万円までは非課税となり、加えて将来の相続税計算時に贈与額を一括して算入できる制度です。

この制度は、原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫への贈与に適用されます。

2024年1月1日以降の贈与からは、この2,500万円の特別控除とは別に、年間110万円の基礎控除が新設されました。

これにより、年間110万円までの贈与であれば、相続時精算課税制度を選択しても贈与税の申告が不要となり、実質的に非課税で贈与を行えるようになりました。

さらに、教育資金贈与の特例や結婚・子育て資金贈与の特例、住宅取得資金贈与の特例など、特定の目的に対する贈与には追加の非課税枠が設けられています。

教育資金贈与の特例では、30歳未満の子や孫に対し、最大1,500万円まで(塾や習い事費用は500万円まで)を教育資金として贈与した場合に非課税となります。 

結婚・子育て資金贈与の特例では、18歳以上50歳未満の受贈者が、結婚・子育て資金として受贈し、一定の期限までに資金を使った場合、最大1,000万円まで(結婚資金は300万円まで)を結婚・子育て資金として贈与した場合に非課税となります。

住宅取得等資金贈与の特例では、18歳以上の子や孫に対し、一定の要件を満たす住宅の新築、取得または増改築のために資金を贈与した場合に、最大1,000万円(省エネ等住宅の場合は最大1,500万円)まで非課税となります。

生命保険の活用:非課税枠

生命保険の非課税枠も、富裕層の相続税対策において有効な手段です。

被相続人が負担した生命保険金のうち「法定相続人の数×500万円」は非課税となるため、現金をそのまま相続するよりも税負担を大幅に減らせる可能性があります。

例えば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人である場合、非課税枠は3人×500万円=1,500万円となります。

もし、被相続人が契約者かつ被保険者であり、相続人が保険金受取人である生命保険に加入していて、死亡保険金が1,500万円支払われた場合、この1,500万円には相続税がかかりません。

生命保険を利用すれば、遺産分割をスムーズに進める保険金の即時支払い機能と、非課税枠の活用を同時に実現できます。

重要なポイントは、保険料負担者が被相続人であり、受取人が法定相続人であることが条件である点です。

これを誤ると非課税枠が適用されない恐れがあるため、生命保険の契約内容や受取人の設定については慎重に検討する必要があります。

不動産の活用:小規模宅地等の特例

不動産の活用は、相続税対策の中でも特に効果的な方法の一つです。

不動産の相続税評価額は市場価格よりも低く設定されることが多いため、現金や株式と比べて税負担を抑えやすい特徴があります。

土地の評価は、路線価方式または倍率方式で行われますが、これらの評価額は公示価格の8割程度を目安に設定されています。

建物の評価は、固定資産税評価額に基づいて行われますが、これも建築費の5割~7割程度とされています。

また、「小規模宅地等の特例」を活用すれば、自宅や事業用宅地の評価額を最大で80%減額でき、相続税の大幅な節税を実現できます。

例えば、被相続人が住んでいた土地を相続し、一定の条件を満たす場合、330㎡までの部分に対して評価額が減額されます。

この特例は、自宅の相続をスムーズに行いながら税負担を抑えるために設けられた制度です。

不動産を活用した相続税対策では、時価と相続税評価額の差を上手に活用することがポイントですが、適用条件が細かいため税理士など専門家のサポートを受けることを推奨します。

【タイプ別】富裕層の相続税対策方法

タイプ別の富裕層の相続税対策方法について解説していきます。

計画的な生前贈与と資産ポートフォリオの組み換えによる大幅な節税

富裕層が相続税対策を行う上で、生前贈与と資産ポートフォリオの組み換えは非常に効果的な方法です。

特に、生前贈与を計画的に活用することで、法定の非課税枠を活かした資産移転ができます。

例えば、親子間であれば年間110万円までの贈与が非課税となるため、これをコツコツと積み重ねることで、結果的に大規模な資産移転が実現します。

また、現金のまま資産を保持している場合、相続時にはその額面がそのまま課税対象となります。

これを不動産や一部の投資商品に組み換えることで、評価額を市場価格より低く抑えることができ、相続税の負担を軽減できます。

たとえば、現金1億円のうち一部を不動産に投資すれば、不動産の相続税評価額が市場価格よりも低く設定されるため節税効果が生まれます。

このように、資産の組み換えと生前贈与を併用することで、相続時の税負担を大幅に軽減する戦略が、富裕層にとっては必要不可欠です。

ただし、適切な計画立案には税理士などの専門家の助言が重要です。

法人設立と自社株対策

法人設立は、富裕層の相続税対策として有効な手段の一つです。

特に事業を営んでいる場合、自らの資産を法人名義に変更することで、資産そのものに対する相続税課税ではなく、法人の株式に対する相続税課税に転換されます。

法人を活用すれば、資産の運用・管理に柔軟性を持たせるだけでなく、自社株の評価額を抑えることができ、大幅な節税につながります。

また、自社株については、株式の相続税評価額が市場価格より低く評価される特例を活用するケースが多く見られます。

事業承継税制などの制度を利用すれば、一定の条件下で自社株の評価や相続額を圧縮できます。

これにより、次世代へのスムーズな資産移転が実現します。

ただし、この方法をとる際には、会社の運営状況や税務面のリスクを慎重に検討する必要があります。

不動産や金融商品も併せた全体的な資産構造を考慮した上で、税理士や弁護士などの専門家の助言をもとに計画を進めることが不可欠です。

富裕層が知っておくべき相続税対策の落とし穴

富裕層が知っておくべき相続税対策の落とし穴は、以下の通りです。

名義預金・名義株は危険?

名義預金や名義株は、相続税対策として利用されることもありますが、その運用には大きなリスクがあります。

これらは実質的に被相続人が管理していると見なされる場合が多く、税務署から否認される可能性が高いです。

たとえば、親が子どもの名義で預金口座を開設しても、親自身が資金を提供し、管理している場合、その預金は相続財産として認定されることがあります。

また、名義株についても同様で、形式的に別名義にしているだけでは相続税の対象外にはなりません。

富裕層の相続税対策では、こうしたリスクを排除し、正当な形で資産を分散させることが重要です。

贈与契約書と証拠の残し方

生前贈与を活用する際には、贈与契約書を作成し、適切に証拠を残すことが重要です。

例えば、親が子どもに毎年110万円以内を生前贈与する場合、文書による契約書を作成し、必要に応じて公証役場での認証を取得するとトラブルを回避しやすくなります。

また、贈与した資金が贈与者自身の口座に戻っているような状態では、税務署から疑念を抱かれる可能性があります。

そのため、贈与後は受贈者が資金を管理・運用している明確な記録を残すことが必要です。

特に富裕層の場合、多額の財産が絡むため、専門家のアドバイスを受けながら手続きと記録を慎重に進めるべきです。

どんな人が税務調査の対象になるのか?

相続税の申告において税務調査の対象となる可能性が高いケースにはいくつかのパターンがあります。

特に富裕層は資産が多いため、税務署が注目しやすい対象です。

たとえば、多額の現金が申告されていない場合や、生前贈与が記録や証拠が不十分な形で行われている場合などです。

また、不動産や株式などの相続税評価が不自然に低い場合も調査対象となることがあります。

さらに、度重なる申告漏れや贈与制度の不適切な利用が発覚すると、より厳しい目が向けられます。

富裕層が相続税対策を行う際は、税務署に不審を抱かれないよう、透明性の高い運用を心がけ、税理士などの専門家と連携することが必要です。

富裕層が今日から始めるべき相続税対策の進め方

富裕層が今日から始めるべき相続税対策の進め方を以下の5ステップで解説いたします。

ステップ1:現状の全資産の洗い出しと相続税評価額の把握

最初に行うべきは、全資産の洗い出しです。

現金、不動産、株式、保険契約など、すべての資産をリストアップしましょう。

現金は額面通りに評価されますが、不動産や株式などは相続税評価額が固定された計算方法に基づき、実際の市場価格よりも低めになることがあります。

そのため、各資産の相続税評価額を正確に把握することが非常に重要です。

これにより、全体の課税対象額が明確になり、次のステップとなる相続税対策の計画を立てやすくなります。

ステップ2:相続税額のシミュレーション

全資産を洗い出したら、それをもとに相続税額をシミュレーションします。

富裕層は累進課税制度によって高い税率が適用されるため、シミュレーションによってどれほどの相続税負担が予想されるかを具体的に知ることが大切です。

特に課税対象額が6億円を超える場合、最高税率55%が適用されるため、大規模な負担が生じます。

このシミュレーションにより、節税対策による効果を明確に理解できるでしょう。

ステップ3:税理士や弁護士等の専門家に依頼

相続税対策において専門家の助言を受けることは欠かせません。

税理士や弁護士などの専門家に依頼することで、複雑な相続税制度の中で最適な対策を講じられます。

不動産の評価や生命保険の非課税枠の活用等、専門知識が必要な部分について安心して任せられます。

また、税務調査のターゲットとならない適法な方法で対策を講じるためにも、専門家への相談が重要です。

ステップ4:策定した相続税対策プランの実行

専門家とともに策定した相続税対策プランを具体的に進めていきましょう。

例えば、生前贈与を計画的に実施する場合、年間110万円までの非課税枠を活用することで、次世代へ資産を効率的に移転できます。

また、不動産投資を通じて現金を不動産へ変えることで、資産の相続税評価額を引き下げられます。

ここで重要なのは、計画に基づいた方法で進めることと、適切な証拠を残しておくことです。

ステップ5:遺言書の作成

相続税対策を万全にするためには、遺言書の作成も欠かせません。 

遺言書を作成しておくことで、相続人同士のトラブルを未然に防ぎ、希望通りの資産分配を実現できます。

公正証書遺言を選択することで、手続きがスムーズに進み、内容が確実に法的効力を持つようになります。

遺言書には資産の分配方法、贈与内容、不動産に関する情報などを詳しく記載し、必要に応じて専門家からチェックを受けることをおすすめします。

まとめ

富裕層にとって相続税対策は資産を守る上で欠かせない取り組みです。

相続税の最高税率が55%にも達する日本では、対策を怠ると多額の税負担によって資産が大きく減少してしまうリスクがあります。

そのため、計画的な節税方法として、生前贈与や生命保険、不動産活用などの手段を活用することが重要です。

専門的な知識が求められるため、税理士や弁護士といった専門家への依頼も欠かせません。

これにより、個々の資産状況やライフプランに合った適切な対策を立てられます。

また、資産全体の評価や相続税額のシミュレーションを行い、長期的な視野で対策を進めることが富裕層の相続税対策において重要です。

資産を次の世代にしっかりと引き継ぐためにも、早い段階から具体的な実行に移しましょう。

適切な対策を講じることで、資産の価値を保ちながら税負担を軽減し、将来への備えを万全にできます。

この記事を書いたライター

Action Hub編集部

Action Hub編集部

このライターの記事を見る

市場の最新動向、専門家の分析、独自のリサーチレポートなどを通して、価値ある情報をハイエンドな投資家に提供します。

Share この記事をシェアする !

Related Articles 関連記事

Top Articles 人気記事

Contact お問い合わせ

投資の相談や気になることがあれば、
Action合同会社までお気軽にお問い合わせください。

免責事項について

当ウェブサイトは、弊社の概要や業務内容、活動についての情報提供のみを目的として作成されたものです。特定の金融商品・サービスあるいは特定の取引・スキームに関する申し出や勧誘を意図したものではなく、また特定の金融商品・サービスあるいは特定の取引・スキームの提供をお約束するものでもありません。弊社は、当ウェブサイトに掲載する情報に関して、または当ウェブサイトを利用したことでトラブルや損失、損害が発生しても、なんら責任を負うものではありません。弊社は、当ウェブサイトの構成、利用条件、URLおよびコンテンツなどを、予告なしに変更または削除することがあります。また、当ウェブサイトの運営を中断または中止させていただくことがあります。弊社は当サイトポリシーを予告なしに変更することがあります。あらかじめご了承ください。